南半球の国の高校を卒業する人の受験について(3) ―帰国生大学入試についてvol. 385―

(2025年12月9日 20:00)

<今回のポイント>
〇日本語を母語とする人が海外の大学に進学するかどうかは慎重に検討する必要があります。
〇ChatGPTのように人によって学習意欲を弱めてしまうものが広く使われるようになった現在ではその必要性が高まっています。


こんにちは。SOLの余語です。
前回は、ニュージーランドの高校を卒業予定の人が日本の大学の帰国生入試や総合型選抜の受験準備を巡る状況に変化が見られるという話をしました。昨年まで、NCEA Level3で7月の初めまでに60単位を取得すると、その後は日本に帰国して日本語小論文試験などの対策に専念することができていましたが、今年に入り留学生ビザの取得要件を満たしているかのチェックが厳しくなったのか、オーストラリアに留学している人と同様に、2月以降はterm間休暇を数週間伸ばす以外に受験準備に専念できる期間を確保するのが難しくなりました。

さて、日本の大学の帰国生入試や総合型選抜に合格するのに必要な日本語の読解論述能力やIELTSのような英語運用能力試験の成績の水準はインターネットで調べてもよく分からないものです。それに合わせて、ここ2回の記事で述べた状況が北半球の国の高校を卒業した人と同じような形で受験準備を進めることを難しくすることから、オーストラリアやニュージーランドの大学に進学しようと考えている人は少なくないかと思われます。

しかし、ここで考えなければならないのは、海外の高校には大学でふれる学問の初歩的な授業があるものの、日本では「高大接続問題」と呼ばれる大学とそれ以前の教育機関で学ぶ内容の間に難易度の大きな違いがあることです。例えば、Oxford University Pressが発行しているvery short introductionsという大学生以上の読者を対象とした本でも確認できますが、学問的な文章で使用される単語や表現には高校までの授業で目にしなかったものが多くありますし、文の構造も複雑になります。

それをただ読むだけでも日本語を母語とする人にとって大きな負担になるはずですが、大学の授業では一つひとつの概念の定義をしっかりと理解した上でその妥当性について様々な角度から考えること、そしてそれを自分なりに言語化することが求められます。大学でその後の人生において価値あるものを習得するのに必要となるのは一定以上の英語運用能力に合わせて、大学で学ぶことに対する強い好奇心や粘り強く何かに取り組む姿勢であり、それが卒業まで維持できることも重要です。

この点、ChatGPTのように、普通の人でもAIを簡単に利用できるようになったことがネガティブに働いているという事例をよく耳にするようになりました。例えば、昨年度の帰国生大学受験セミナーにはオーストラリアの州立大学を退学した人が在籍していたのですが、彼は日々の授業で出される課題をこなすことに疲弊し、レポートの作成でChatGPTを利用するようになったそうです(このようなケースでよくあるのが、ChatGPTに文章を書かせた上で、言葉遣いなど細かなところを自分なりの形にするというものです)。そして、その範囲が広がっていく中で自分が学んでいるものが何かが分からなくなり、日本語で一から学び直しをしたいということで帰国生入試や総合型選抜の受験準備をすることになりました。

このような学習環境が進学当初のモチベーションを挫くといった可能性があることを踏まえると、大学をどの国で進学するかについては慎重に検討すべきでしょう。SOLではオンラインまたは対面で個別面談を行っていますので、日本の大学の帰国生入試や総合型選抜で合格者に求められているものを確認したい人に利用してもらえればと思います。

<個別面談お申し込みフォーム>
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form2.html

また、SOLの帰国生大学受験セミナーの「2026年11月卒業生コース」では12月の初めから集団授業を行っています。その概要は以下のリンク先で確認してください。よろしくお願いいたします。

<帰国生大学受験セミナー「2026年11月卒業生コース」概要>
https://www.schoolofliteracy.com/seminar/course2/index.html#c01

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html

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