こんにちは。SOLの余語です。
前回は、高校から英語圏の国に留学した人が自己肯定感や学習意欲の著しい低下といった問題に直面した場合の「プランB」として、日本の高校に編入することを挙げた上で、編入試験を実施している高校をどのように見つければいいのかを紹介しました。このような状況への対応として母語が主に使われる環境で日常生活を送れるようにするのが効果的であることは言語教育学の研究で明らかになっていますが、SOLの教室でも日本語を用いて学ぶことで学習意欲が回復したというケースが多く見られます。
さて、高校から英語圏の国への単身留学を検討している人やその保護者の中には、現地の学校生活の中で教師や他の生徒とコミュニケーションを取っていたり、ホストファミリーを含めた地域の人と交流したりすることで、自然と英語運用能力が上がっていくとイメージしている人は少なくないかと思われます。確かに、海外に渡航するまでの段階で、英語の語彙や文法の学習に十分な時間をかけるのに加えて、リスニングやスピーキングの能力を上げるための取り組みをしたというケースでは、英語圏のネイティブとのコミュニケーションの量が多くなるにつれて英語運用能力が伸びていくことが考えられます。
しかし、上で述べたような条件を満たせていない場合には、日常生活での会話には大きな問題を感じないものの、高校の授業で見られるようなアカデミックなものに対応するのが難しい、もしくは日常生活の中でも狭い範囲のものしか理解したり伝えたりすることができないという「壁」に直面し、時間が経ってもそれを克服することができない人が多くいます。その背景には、英語を実際に使用した体験から単語の意味や用法、文を構成するルールなどを学ぶことの難しさやそれに伴う負担があります。
これは以前にも述べましたが、上のような形で第二言語を習得しようとする際には、まず自分が目にしたり耳でとらえたりすることのできた単語がどのように使われているかを観察し、そこから立てた仮説が正しいかどうかを確認していくというプロセスを取るのが通常です。そして、意味や用法が分かる単語の数が一定の水準に達すると文法の学習が始まりますが、それも同様の過程で行われます。日本語と英語のように言語学的な距離が大きいものを学ぶ人にとっては、時間やエネルギーの面で大きな負担がかかるもので、学習者が持つ認情報処理に関する能力によっては大きな混乱が生じてしまいます。
このような問題を回避するのに有用だと思われるのが、単身留学生のほとんどにとって母語である日本語で体験の蓄積から得たものを整理することです。例えば、ある単語があまり関連性があるとは思えないいくつかの場面で使われているのに接して、どのような意味があるのか仮説を立てるのが難しい場合でも、日本語でその単語が持つイメージを確認する機会があれば時間やエネルギーを無駄に消費することはなくなります。
また、最近、文法の学習において、『一億人の英文法』(東進ブックス)の筆者である大西泰斗氏に代表されるような英語母語話者の感覚を言語化したり、あるルールの成り立ちを論理的に説明したりする試みが注目されていますが、このような方向性での日本語を用いた解説にふれることは同じように学習を効率的なものにしてくれます。
それを踏まえると、英語圏の国への単身留学に対する一般的なイメージを捨て、日本語で英語運用能力を上げるのに必要なことを確認するのが「プランB」になると言えそうです。
SOLでは、zoomを用いたオンライン個別指導(1コマ60分6,000円)を日本時間の月曜日から金曜日9時半から12時半まで、13時半から19時まで行っており、上で述べたような方針で授業を実施しています。海外での英語学習で問題に直面している人にはこの記事の最後にあるフォームなどからご連絡いただければと思います。よろしくお願いいたします。
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現在の教室の状況について(2024年9月17日)―SOL帰国生大学受験セミナーについてvol. 308―
(2024年9月17日 19:45)