海外の大学への進学について(9) ―帰国生大学入試についてvol. 380―

(2024年3月16日 17:30)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、大学への進学を検討する際に、どのような環境が望ましいのかについて様々な考え方があるものの、各学問に特有な考え方や知識に関する専門的な理解を深めることがその目的なのであれば、「どのような言語が主に使用されている環境なのか」ということを重視するのが望ましいという話をしました。学問研究に関連したキャラクターが登場する多くの文学作品や映画、TVドラマを見ても分かるように、専門性を高めるのに必要なもののほとんどは言語によって伝達されるからです。

SOLの帰国生大学受験セミナーでは、例年、高校からカナダやアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどの英語圏の国に単身で留学した人が生徒の半数以上を占めています。彼ら/彼女らから受講の申し込みがあった際に、これまでどのような学校や塾に通っていたか、大学にはどのようなことを期待しているのかといった点とともに、高校での成績やTOEFLもしくはIELTSなどのスコアなどに関する質問に答えるカウンセリングシートを作成してもらっています。

このような取り組みをしているのは、1人1人の生徒の状況に合った学習プランを提示することが主な目的ですが、20年間以上様々な人が作成したものを見ていると、母語が日本語である人が英語で日常生活を送る環境に入った後に、現地で使われる言語の運用能力や高校での学力に対する評価がどのように変化していくのかについても理解を深めることができます。

この2つの指標の変化については、海外での滞在年数が長くなるにつれて英語運用能力が向上するとともに高校で履修しているアカデミックな科目の成績が上昇したり、前者が順調に伸びていかず高校での成績も何年を経っても低いままであったりというように特徴的なパターンが見られます。それらを見ると高校の授業で用いられる言語が学習者にとってどのようなものか、そして学びの質がどのように高まっていくかということの間に相関関係があるという推測が成り立つように思います。

そして、このようなパターンの中で、前回の記事との関連で注目したいのが、高校入学時の英語運用能力が低く、その後の伸びもそれほど大きくない状況の中で、10年生もしくは11年生の成績で数学のみが突出して高かったのに、それが高校生活の終盤になるにつれて急激に低下していくというものです。

そのような高校での成績などに関する変化を体験した人の中には、自分は数学が得意なので大学でも理系の学問を学ぼうと考えるようになる人もいますが、多くの場合、最終的に文系の学部・学科の帰国生入試や総合型選抜を受験することになります。彼ら/彼女らに数学の成績の推移の背景に何があったのかを尋ねてみると、10年生や11年生の数学の授業で扱う単元はすでに日本の中学校で学んでおり、テキスト内にある数式やグラフ、図形などを見ればそこで何が扱われているかが分かったという答えが返ってきます。

しかし、高校生活の後半で、それまでに日本語でふれたことのない領域に入っていくと、英語で書かれた公式や概念に関する説明を理解しなければなりませんが、英語の読解能力がそれに対応できる水準まで上がっていないため、そこでどのようなことが述べられているのかが分からず、授業に徐々についていけなくなるそうです。

彼ら/彼女らの経験を踏まえても、あまり言語を使わないものと言うイメージを持っている人も少なくない理系の学問を学ぶ場合でも、学習者にとってどのような位置にある言語を用いるかが専門的な理解を深めていく際には重要になりそうです。次回の記事でも、この点について検討するのに役に立ちそうな事例を紹介したいと思います。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html

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