こんにちは。SOLの余語です。
2月19日の記事では、最近、未知のウィルスの感染が拡大したり、大きな被害を生むような災害が起きたりするという状況の中で、最善と考えられる対策の前提に有効性が失われた際の「プランB」を考えておくことができないという傾向が日本人にあることを指摘している論考が目立つようになったという話をしました。様々な場面で精神的に多くの負荷を与え、人によっては長期間に渡って医療的なケアを受けなければならないといった事態に至る中学受験を子どもにさせるのはまさにこの「プランB」を考えておくべき場面に当たると思います。
さて、ここまでの記事を読んで、「このブログは日本の大学の帰国生入試や総合型選抜を受験予定の人を対象にしたものであるはずなのに、なぜ中学受験が引き起こす問題について延々と論じているのだろう」と不思議に思った人もいるかもしれません。中学受験の準備を行っている時にその後の生活を左右する問題に直面する人がいるのは、僕のように教育に関連した仕事をしている人間にとってそれ自体が重大な意味を持っています(この教室の生徒でも精神的な問題という形でその影響が確認できる人が少なくありません)が、帰国生の大学受験に関するブログでこのようなトピックを取り上げたのには、中学校や高校から英語の習得を目的に単身留学するという選択も周りの大人が「プランB」を用意しておくべきものだと考えていることがあります。
SOLの帰国生大学受験セミナーには、例年、保護者の仕事の都合で海外に渡航した人だけでなく、単身留学生として海外の教育機関に在籍した経験を持つ人が在籍しています(自分たちで教室を運営するようになってからは後者の方が多数派です)。僕らは彼ら/彼女らの学習に関わる状況を把握するために、授業が始まった時点で「どのような経緯で留学することになったのか」、「留学する前に日本でどのような準備をしたのか」といった点を確認するようにしています。
そこで明らかになるのは、ほとんどの人にとっての母語である日本語と英語の間には言語学的に大きな距離があり、表記もしくは発音のシステムや文法などに根本的な違いが多く見られるにもかかわらず、留学前の準備としての英語学習をほとんど行っていない人が少なくないということです。また、何らかの取り組みをしている場合でも、特定の教科について用語などの確認にとどまっていたり、学習にかけた期間が短かったりする(SOLでも留学前の準備のサポートを実施していますが、短い人でも6ヶ月間は受講しています)ケースが多く見られます。
日本の学校のカリキュラムでは、小学校で2年間、中学校で3年間、英語の授業を受けますし、Amazonなどを見ていると、「中学3年までに学ぶことだけで英語は使いこなせる」という趣旨の書籍が人気を集めているようなので、特段の準備をせず留学生活を始めても問題ないと考える人もいるかもしれません。しかし、中学3年修了時にそこまでに学んだことが十分に定着し自由自在に使いこなせる状態になっている人は非常に限定的ですし、留学した先で情報を取り込む際の主な基盤となる聴覚が英語の発音やリズムに合わせられるようになるにはリスニングの練習を学校外で多く行う必要があります。
そのような認識が十分に広がっていない現状を踏まえると、高校などから英語圏の国や地域に留学する人の英語運用能力が、現地に根付いて生活している人のものを基準にすると幼稚園の年長、もしくは小学校の低学年の人と同等であることが珍しくないというのはそれほどおかしな話ではないように思われます。次回以降の記事では、彼ら/彼女らが留学生活において直面する問題がどのようなものかを考えてみましょう。
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現在の教室の状況について(2024年3月4日)―SOL帰国生大学受験セミナーについてvol. 286―
(2024年3月4日 19:00)