新年のご挨拶(4) ―SOL帰国生大学受験セミナーについてvol. 275―

(2024年1月15日 18:30)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、このところ、厚生労働省などの調査で「ネット依存」の状態に陥っている中高生が増加していることが明らかになっているが、SOLの教室でもスマートフォンが手元にないと落ち着かなかったり、インターネットの利用時間が日々他のことができなくなるほど長くなったりしている人を目にするようになったという話をしました。年齢相応な水準でコミュニケーション能力が身に付いているかが問われる帰国生入試や総合型選抜の受験においてインターネット上にある自分の世界に「埋没」するのは望ましいこととは言えないため、OGのスクールカウンセラーと適切な対処のあり方を考えていく予定です。

さて、帰国生入試や総合型選抜の受験準備などを行う人にインターネットとの付き合い方について考えてほしいと思うのには、「ネット依存」の問題の他に、そこでの言論に関わる状況があります。インターネット上ではTwitterやYoutubeのようにあらゆる人が情報を発信できるプラットフォームが作られてきており、それによってこれまでよりも多様な考えや価値観にふれることが可能になった一方で、新聞やテレビといった伝統的なメディアで見られるような事前に校閲を行う存在がないために、事実に基づいていなかったり、現代社会が依って立つ基本的な原理に抵触していたりする発言などが多くの人の目にふれるといった問題が起こっています。

中でも、ここ数年日本で問題になっているのが、この社会で何らかの問題に直面している人を切り捨てるような思考に基づいたものです。例えば、Youtubeなどにおいて新進気鋭の論客とされる人が少子高齢化や生産性の伸び悩みのような問題の解決策について「高齢者は集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」という発言をしたり、保守系という評価を受けている政治家がした先住民族の伝統的な衣装を着た人に対する侮蔑的なコメントが法務局から人権侵犯と認定されたりした事例は世間の注目を集めましたが、それ以外にも貧困問題に苦しむ人々や日本に在住する外国人、障害者、性的マイノリティといった人々を「自己責任」や「伝統」という名目の下にこの社会の一員ではないかのように扱う投稿が増えていると言われます(SNSには「フィルターバブル」という特性があるため、僕が直接確認するのは難しいのですが)。

SOLの教室で学ぶ年頃の人は、社会に関する知識や体験が十分なものとは言えませんし、他者を切り捨てるような言論は複雑なことをあまり考えさせるものではないためか、帰国生大学受験セミナーの生徒の中にもそれを正しいものとして受け入れる人が増えているような印象があります。しかし、大学で学ぶことになる学問はそれぞれ対象や観点、研究を進める方法などに違いがあるものの、基本的に社会や個人のあり方がどのようなものかを正しく把握することに加えて、様々な規模の共同体において多様な価値観や考え、バックグランドを有している全ての人がより良い生活を送れるようにするにはどうしたらよいのかを考えることにその意義があります(日本では今でも根強い支持を受けている新自由主義経済学は「社会保障制度を整えると人々が労働しなくなるので望ましくない」というような方向性で物事を考えることがあるのでその例外と言えるかもしれません)。

首都圏の有名私立大学の帰国生入試や総合型選抜には、ほとんどの場合、日本語小論文試験があり、それを出題した学部・学科で学ぶための素養を受験生が持っているのかが試されますし、出願手続き時に提出する志望理由書などを資料にして実施される面接試験にも同様のことが言えます。この試験でよい評価を受けるには、十分な思考力を持っているかについて疑いを持たせるだけでなく、学問の本来的な目的から外れるような形で物事を考えているのではないかと思わせるようなことはできるだけ避けるべきです。

僕らはこれまで授業の中で社会的な問題などに関してより具体的な話をすることで生徒に自分たちにとっても身近な問題であることを感じてもらうようにしてきましたし、その時々に話題になっているトピックが学問的な視点から見るとどのように評価できるのかについても解説するようにしてきました(僕自身が障害者であることがこの点で役に立つこともあります)。それによってある程度の成果は上げているように思いますが、今年はインターネット上でどのように物事を調べるのが適切なのか、信頼できる論者をどのように確認すべきかといった点まで指導の範囲を広げて行ければいいなと考えています。

それでは、帰国生の大学受験やSOLの帰国生大学受験セミナーなどに関して情報をご希望の方は以下のフォーム、もしくはinfo@schoolofliteracy.comよりご連絡ください。よろしくお願いいたします。

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