現在の教室の状況について(2023年12月18日)―SOL帰国生大学受験セミナーについてvol. 269―

(2023年12月18日 19:00)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、2015年から地方創生戦略の一環として首都圏の私立大学の文系学部において入学者に関する規制が実施されたことで大学付属の中学校の人気が高まったことなどによって、東京23区を中心に中学受験をする人が毎年増加しているという話をしました。そして、それに合わせて「受験うつ」で心療内科の診察を受ける小学生が増えているようですが、保護者や周りの大人から過度な期待を受けたり、学習のあり方などについて叱られたりすることで発症する人が多いとされています。

保護者とのどのようなやり取りが「受験うつ」に苦しむ人が小学生でも増えているという状況につながるのかについては、2019年7月8日に「NHK教育サイト」に掲載された記事「お父さん、僕もう無理だよ 中学受験に潜む“教育虐待”の実態」が参考になるかと思います。これは、東京都内の公立小学校の教員から「中学受験で子どもたちが疲弊している」という話を聞いたNHKの記者が中学受験を経験し精神的な問題に直面することになった13歳の少年とその父親から、受験準備の中でそれぞれが取った行動に関してどのようなことを考えていたかを聞くという内容のものです。

少年は、自らも中学受験をした経験がある父親から「いい経験になる」と言われ軽い気持ちで受験をすることにしたそうですが、成績が上がらないことから父親が彼のスケジュールを管理し学習上の指導も行うようになりました。そして、その中で誤った答えを出すと父親に怒鳴られたり叩かれたりする日々が続くことで自己肯定感が著しく低下し、自分なりに成果を出すことができたと感じたテストについて否定的な評価を受けた小学5年生の秋に不登校になってしまったとされています。その後、このような事態を深刻に受け止めた父親が少年とともに児童虐待問題を扱うNPOでカウンセリングを受けることで少年の精神状態が一定程度回復したという形でこの記事は終わっています。

この事例は、多くの記者が在籍し公共放送機関でもあるNHKが取り上げたものなので、他にも多くの共通点がある事例が存在すると考えていいのでしょう(同様のものはインターネット上でもいくつも確認できます)し、これまでの生徒の中で中学受験をした際に何らかの健康に関わる問題を抱えることになった人からも同じような話を聞くことが多いです。僕がこの記事を読んで強く印象に残ったのは、記者が「教育虐待」と呼ぶ状況を生じさせてしまったことについて父親が質問を受ける場面で、彼は学習指導の中で行ったことを「すべては子どもの将来のためにとやっていました」と評価した上で、「子どもは、自分の分身だと思っていた」と述べています。これは、自分が解くことのできる問題に「分身」である少年が苦労していたことに苛立ちを感じて、上で見たような行動に出てしまったということなのではないかと思います。

そもそも親子で容姿などが似ているとしても、全く同じ環境で暮らしているのでなければ、日々体験していることも異なっているはずである以上、子どもを自分の「分身」として扱うのは適切だとは言えないと考えますが、それ以上に気になるのが「自分の分身」という表現の中の「自分」という部分です。それについては年が明けてからの記事で説明したいと思います。

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