海外の大学への進学について(4) ―帰国生大学入試についてvol. 375―

(2023年12月2日 15:30)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、ここ数年、日本の経済界で事前に業務の範囲を定めた上で雇用契約を企業と労働者が結ぶ「ジョブ型雇用」に注目が集まっているという話をしました。その前に紹介した新卒採用をいわゆる「高度人材」に限定する動きとは、被雇用者に専門的な考え方や知識、技能を求める方向性という点で共通性がありますが、このような企業の動向を踏まえると、大学で少なくとも専門性を身に付けるための素養を獲得すべきであるということになるでしょう。

現在、海外の大学への進学を検討している人の中には、ここ2回の記事でふれたような社会で見られる変化について、「日本の企業では英語運用能力も専門的な技能の一つとして扱われるはずなので就職は問題なくできるはずだ」という考えを持っている人も少なくないかもしれません。しかし、グローバル化に伴って日本の企業が英語を使える人材を求めているという新聞記事などを頻繁に目にするようになってから20年近くが経っていますし、(少なくとも高度な経営判断を行う会議などで)英語が主な使用言語となっている、もしくは昇進の条件にTOEICのスコアに関するものが入っている企業があるという話も認知度が高いものになっていると思います。

この結果、少なくとも経済的に安定した生活を送るためには日常的なコミュニケーションを英語で取れた方がよいと考える人も増えており、そのような力を身に付けるために、中学校や高校、大学に通う期間の一部を英語圏の国や地域で過ごしたり、幼少期から英語を使う機会を一定の頻度で確保したりしている人が多くいます。また、日本の大学では、英語で全ての授業を行う大学や学部・学科が増えているだけでなく、通常の学部・学科の授業の中に英語で何らかのトピックについて学ぶものも多く見られるようになっています。そのため、日本の教育機関に在籍した経験しかないものの一定程度以上の英語運用能力を有している人の数は増加傾向にあると言えるでしょう。

実際に、SOLのOBOGの中で日本の大手企業に就職した人から、「日本の学校に通っただけなのに英語でのコミュニケーションに積極的な姿勢を見せる人が年々多くなっており、英語が話せることがアドヴァンテージにならなくなっている」という話を聞くようになりましたし、プログラミングのような専門的な技能や社会的な評価の高い資格を取得するための学習をしている人もいます。彼ら/彼女らの様子に加えて、少なくともフォーマットがある程度定まっている文章などに関する自動翻訳技術が急速に発展していることを踏まえると、日本社会でも英語運用能力は高度に抽象的な議論を柔軟な形で行える水準に到達した時のみ専門的な技能として扱われ、そこまで英語を使いこなすことができない人は大学などでその他の領域での専門性を高めておくべきと言われる日が来るのもそう遠くなさそうです。この点でも、専門的な学びはどの言語で行うのが最も効果的かという観点から大学選びをしていくのがいいと言えるのではないかと思います。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
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