海外の大学への進学について(2) ―帰国生大学入試についてvol. 373―

(2023年11月4日 14:45)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、海外の大学への進学について、「保護者の希望である」、「日本の大学の帰国生入試や総合型選抜の受験準備をするのが面倒である」、「日本の高校に通う同じ歳の人に遅れを取りたくない」、「英語ができれば日本の企業への就職が有利になる」といった強いとは言えない理由でそのような選択をするのは慎重になるべきだという話をしました。僕がこのように考えるのには、最近日本の労働市場で見られるようになった変化が関係しています。

2021年12月にウェブサイトの「現代ビジネス」に「いよいよ始まった『日本型雇用』の大崩壊…GMOが新卒採用で『高度人材だけを採る』意味」というタイトルの記事が掲載されました。著者の加谷珪一氏は、あるインターネット企業が今年度から新卒採用の対象をいわゆる「高度人材」(例えば、エンジニアや統計のスペシャリストを意味するようです)とし、高い年収を保証する代わりに採用する人の数を絞る方針を取るようになったことを取り上げた上で、今後、ITやAIに関わる技術の発展によって企業における業務の多くが自動化され、多くの企業で社員の総数の抑制のために、スキルを獲得するための明確な戦略を持って主体的に動いている人にのみ安定した雇用を与えるようになるのではないかと述べています。

この記事で筆者の主張をサポートする主な事例になっているのはインターネット業界の中でもインフラストラクチャーとなるものを提供する企業の話なので、そこで見られた動きがどれくらい広がっていくのかは分かりませんし、AIが加谷氏が考えるほどクリエイティブな能力を持つになるかについては疑問符が付くものの、「高度人材」という言葉を耳にする機会は確かに増えたように思います。例えば、日本政府は、少子高齢化が進む中で様々な社会システムを維持するために移民を受け入れるべきという声があるにもかかわらず、難民の認定を行うことにすら消極的な姿勢を見せている一方で、「高度人材」とされる人々に対する在留管理上の優遇措置を導入しており、これには産業界からの要請が関係していると言われます。

また、グローバル化の進展などにより、経済面での国際競争に加わる国が増加し、それまで日本の企業が大きな収益を上げることができていた領域でも有力な企業が他国で出現する中で、日本社会では非正規雇用の労働者が目立つようになったと言われます。このような人々が貧困問題に直面しているという報道があるものの彼ら/彼女らの待遇を改善しようとする動きが見られないこと、そして人口が減少するのに伴って国内市場が今後縮小していくことなどを踏まえると、多くの企業で様々な技術を活用しながら雇用者数を抑制していくということが起こる可能性を否定することは難しいでしょうし、それに伴って多くの企業で新規採用が「高度人材」中心になるのも十分にありうる話だと思います。

このような状況では、少なくとも経済的な面で安定した生活を送ることができるようになるには、大学を卒業するまでに専門的な知識や考え方、技能をある程度習得しておく、もしくは将来それを身に付けるための素養を得ておくことが重要になります。これが、僕が海外の大学に進学するかについて検討する時に視野に入れておかなければならないと考える社会的な変化の一つです。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
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