こんにちは。SOLの余語です。
前回は、自己評価(self-esteem)が低く周りの人とのコミュニケーションに及び腰になっている若い人が多く見られる現在の日本社会において、企業の経営基盤が弱くなり社員教育のプログラムを充実したものにすることが難しくなったことなどで、これまで学んできたり体験したりしてきたことを自分から発信できる力が高く評価されるようになったと述べました。このような変化によって、上で取り上げたような人々は以前よりも相互扶助的なコミュニティーを形成する機会を逸する可能性が高まったと思われます。
このところ、自分は他の人とのコミュニケーションがうまく取れないと考えている生徒と話をしていると、僕が教室を訪ねて来る様々な人と会話をしている姿をよく目にするためか、「一緒に授業を受けている人と友達になりたいが、そのためのアプローチとしてどのようなものが適当か」という質問が出て来ることが増えた印象があります。このような問いかけに対して僕が提示する答えは「これまで生活していた場所や空いている時間で何をしてきたかなどについて質問をしてみればいいのでは」と答えることが多いのですが、それは質問をすることが共通の話題を見つけるための手段の一つになるだけでなく、自分に面白い話題になるようなものがないと考えている人でも周りの人に自分が関心を持っていることを示す最も負担の軽い方法だと考えているからです。
このような話をすると、すぐにそれを実行に移す人も一定数いる一方で、「他人に個人的な質問をすることによって関係が気まずいものになってしまうのではないか」という心配をする人も少なくありません。これには、前回の記事で述べたように、様々なことを自分から発信するコミュニケーションのあり方が望ましいものとされている現状に加えて、1990年代後半辺りからプライバシーや個人情報の保護ということを、人々が自己実現できるような状況を整えたり悪質なセールス業者などの勧誘を防いだりするという当初の目的を超えて、社会の中で人々のつながりが断ち切られるような程度まで重視されるようになったことが関係していると思われます。
この点については、生活に必要なものやサービスを全て金銭で取引するような生活を人々に強要することで産業社会が活動できる領域を拡大しようとしたという評価があるようですが(例えば、『現代社会の理論』で有名な見田宗介氏はこの問題を「情報消費社会」という観点から分析しています)、その背景にどのような事情があるにせよ、他人の生活の様子や関心の向かう先などについて尋ねることが「無闇に詮索をする」ことになってしまい、相手の気分を害してしまう可能性が高いと捉えられてしまうような状況は、自分に対する評価が低く周りの人とのコミュニケーションが得意ではないと感じる人にとって相互扶助的なコミュニティーを形成する機会をさらに逸することにつながってしまう可能性があると思われます。
さて、7月に入ってから記録的な暑さが続いており(報道などを見ると10年に1度の暑さと言われることが多いようです)、帰国生大学受験セミナーの生徒の中にも熱中症で体調を崩す人が見られます。その対策として水分を十分に取ることの他に、体力を維持するために睡眠をしっかりととることが考えられますが、受験が段々と迫ってくると後者を疎かにしてしまうことが増えるようです。そのため、月曜日の9時45分からのガイダンスで適切な睡眠のあり方とその効用について確認するようにしています。
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現在の教室の状況について(2023年7月31日)―SOL帰国生大学受験セミナーについてvol. 255―
(2023年7月31日 19:30)