社会的な活動への参加について (8) ―帰国生大学入試についてvol. 370―

(2023年7月14日 15:00)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、帰国生入試やAO入試の受験において、社会的な活動に参加したことが大学で学びたいと思うものを見つけることにつながったという形で話が展開する志望理由書を面接試験の試験官が18、19歳の人が書いた「自然なもの」(周りの大人が手に入れていないものと言い換えることができるかもしれません)と捉える傾向があるようだと述べました。SOLの帰国生大学受験セミナーで社会科学系の学部・学科を受験しようとしている人はこのような方針で志望理由書を書くことが多いですが、面接試験で過度に厳しい質問が投げかけられたという話を耳にすることはほとんどありません。

さて、前回の記事を読んだ人の中には、志望理由書の内容として上のような評価を受けるものがどのようなものかが分からないという人もいるかもしれません。志望理由書の中で社会的な活動に参加した体験をどのように活かすことができるかについて具体的なイメージを持ってもらうために、SOLの帰国生大学受験セミナーの授業を受け、慶應義塾大学法学部政治学科を帰国生入試で受験した人が提出したものを以下に貼っておきます。

私は、3年間カナダに留学し、その中でホームレスとなったファーストネーションの人々を保護するプログラムを含め、様々な社会的活動に参加したが、特に印象に残ったものがある。それは、strive programという障害者の学習を1年間に渡りサポートするものである。この活動の目的は、障害を持った生徒に授業をすることや、共に行事に参加することなどを通して、彼らを助けると同時に彼らについて知るというものである。私も実際に自閉症、多動障害などの障害を持った生徒たちに深く関わることができた。
この活動を通して、社会的なマイノリティーの人々も自分たちと同じように自らの生活や将来について希望や意欲を持っていることを実感した。そして、多くの国ではこのような人々の社会参加を支援するための制度が整えられている。例えば、カナダでは障害者統合のための国家戦略と題し、障害者の社会的参加を促進するために、教育や職業訓練などの雇用関連活動に力を入れており、この事業のために連邦の省庁が利用できる基金1億1200万ドルを新たに用意した。しかし、日本では教育機関での受け入れを含め、同じような目的を持つ社会制度が不十分であることが度々指摘されており、社会的マイノリティーの人々の社会参加の可能性が閉ざされることが多いと聞く。私はこの状況を不公正だと考えており、将来は普通の人々と同じ希望や意欲を持つ人が尊厳の感じられる生き方ができる社会づくりに貢献したいと考えている。
そのため、貴学法学部政治学科では社会的マイノリティーの人々に関わる不公正を解決できるような社会制度のあり方について様々な角度から考えたいと思っており、政治学や法学だけでなく、その他の学問に関する授業を受けられる環境が理想的であると考える。貴学での4年間では、多様な考えを持つ人々と共に高い水準の授業を受けることを通じて、自分の考えを深めていけたらと思う。


この年の面接試験では、試験官に厳しい指摘をされて落ち込んでいた人が少なくなかったようです(中には、大学で学ぶようなことにすでに結論を持っているという志望理由書を提出して試験官から怒声を浴びせられた人もいたそうです)が、この志望理由書を読んだ段階で試験官の態度が和やかなものになり、質問も容易に対応できるものしか出て来なかったと聞いています(試験官の方が話している時間が圧倒的に長くて驚いたとこの生徒は言っていました)。そのような話を耳にすることが多いので、少なくとも社会科学系の学部・学科を受験する際には社会的な活動に参加しておくべきと僕らは考えているのです。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html

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