こんにちは。SOLの余語です。
前回は、帰国生入試やAO入試の受験準備について、小論文試験に向けた対策ではないもの(TOEFL iBTやIELTSといった英語運用能力試験において成績を伸ばすために行うものがその代表的なものです)でも受験生に大きな負担がかかる可能性があるという話をしました。このようなことを考えても、少なくとも実際に試験を受けるまでの期間は学習に対する意欲をできるだけ高い水準で維持する必要があると思います。
さて、話が少し横道に逸れたようにも思いますが、何らかの社会問題の解決に貢献するような活動に参加することは、特に法学や経済学、政治学といった社会科学系の学問を専門領域としている学部・学科を受験する場合に、受験生から強い学習意欲を引き出すことにつながると僕は考えています。性的志向におけるマイノリティーや外国人労働者の人権保護に関わる問題や、日本でも都市部で広がりを見せている貧困問題のようにこれらの学問の研究者の間で注目を集めているトピックについては、インターネットや新聞、テレビなどで日々多くの情報が流れています。
しかし、これらの問題が社会や個人の生活にどのような影響を及ぼすのかに関する理解について、すでに社会人となった人でも成長していく中で多くの時間を過ごした家庭や学校、地域の状況によって大きな違いが見られると言われます(以前文科相だった萩生田光一氏がいわゆる「身の丈」発言をした際にこのような指摘が多くなされました)。それを踏まえると、社会における活動範囲が大人に比べると狭いものになることが通常である18,19歳の人にとって、家庭や学校の中、もしくはその周辺に当事者がいない場合には、それらの問題の切実さを現実感がある形で認識することが難しくなるのは容易に想像できることだと思います。そして、自分も何らかの取り組みを行わなければならない問題があるという強い心理的要請がないことによって受験に向けた準備にも熱意を持って取り組むことができないという人が少なからず存在します。
この点、社会的な問題を解消するための活動に参加する機会があれば、当事者やその周辺にいる人々がどのような状況に置かれているかを直接確認ができますし、彼ら/彼女らを支援する人々の話を聞くことができます。例えば、今年度の生徒で最近、家庭の経済状況などが理由で十分な学習機会を得ることができない子どもと一緒に学校の課題に取り組むボランティアに参加し始めた人がいます。彼は外国から来たシングルマザーの家庭で育ってきた子どもを担当しているのですが、彼女が主に言語的な理由から母親との間でよい人間関係を形成できなかったり、学校での学習についていくことに難しさを感じていたりするという話を聞いて、日本に住む外国人に対する行政などのサポートが充実していないことによって生じる問題の深刻さが(その一端に過ぎないとは思いますが)実感できたようです。
彼はこれまで自分自身が学習を進めて行く際に障害となるものを克服するのにあまり積極的ではなかったのですが、ここ数週間、その姿勢に変化が見えてきました。もちろん、それには帰国生入試やAO入試が実施される時期が近づいてきているということが関係しているはずですが、彼の話を聞く限り、ボランティア活動で上で述べたような人に出会ったことからも一定程度の刺激を受けていると思われます。このような事例が少なからず見られることが、学習意欲を引き出すために社会的な活動に参加することが望ましいと僕が考える理由なのです。
それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html
社会的な活動への参加について (4) ―帰国生大学入試についてvol. 366―
(2023年5月27日 16:00)