こんにちは。SOLの余語です。
前回は、早稲田大学政治経済学部のグローバル(海外就学経験者)入試や慶應義塾大学SFCの2つの学部が実施しているAO入試のように、出願手続き時に高校在学中に行った活動に関する書類を作成しなければならないものだけでなく、法学や経済学、政治学といった社会科学系の学部の帰国生入試やAO入試を受験する場合にも社会的な活動に取り組むことが望ましいという話をしました。今回は、僕がそのように考える理由の一つを紹介したいと思います。
帰国生入試やAO入試では、TOEFL iBTやIELTSのような英語運用能力試験の成績と小論文試験の出来に基づいて合否の判定がなされることが通常であるということはこのブログにおいて繰り返し述べていることですが、ほとんどの入試は小論文試験においてA4用紙1、2枚分の文章を読み、そこで展開された主張などに関して自分なりの考えを述べる形式を採っています。その文章は一つ一つの学部・学科が専門領域としている学問に関連したトピックについてのものであり(これは、青山学院大学の海外就学経験者入試で見られるような1、2行の文で論ずるテーマだけを指定する問題にも共通しています)、そのトピックが現在多くの研究者から重要なものであると評価されているという特徴が多くの入試で見られます。
このような説明をすると、ある年度に出題されるものについてはおおよその予想が立てられるのではと考える人もいるかもしれません。しかし、大学の学部・学科を紹介するパンフレットを確認すると分かる通り、学問の中には法学や経営学のように一つの同じ分野として括られているものの、研究の対象となっているものに大きな違いがあるものが多く含まれているものがありますし、経済学や社会学のように根本的な分析手法が共通している場合でも、そこで注目を集めているトピックには時事的なものから社会の基本的な構造に関わるものまで様々なものが考えられる分野もあります。
また、帰国生入試やAO入試を実施する大学や学部・学科が小論文試験の問題を上で述べたような形にしている目的の一つは、受験生が入学後に授業やそこで与えられた課題の内容を適切に理解できるかということを確認することにあり、事前に持っている知識に依存する形で読めてしまうような文章をなるべく出題しないようにしているものが少なくありません。例えば、この3年間は新型コロナウィルスの世界規模での感染拡大が社会に様々な形で影響を与えてきたため、多くの学問で大きな注目を集めてきましたが、実際には特に首都圏の有名私立大学で実施された帰国生入試やAO入試においてこれに関連したトピックを取り上げたものは一般的に予想されるよりもはるかに少ない数だったように思います。
このようなことを考えると、小論文試験の対策においては、自分が受験する学部・学科が専門領域としている学問に関連したトピックを幅広くカバーし、基本的な用語や概念に対する理解も深めておく必要があります。それには学習に対するモチヴェーションをできるだけ高い水準で少なくとも受験準備を行う間は維持する必要がありますが、それに社会的な活動への参加が大きな役割を果たすのではないかと僕は考えています。
それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html
社会的な活動への参加について (2) ―帰国生大学入試についてvol. 364―
(2023年5月13日 18:30)