TOEFL iBTやIELTSを受験するための学習の進め方について(27) ―英語学習の勧めvol. 197―

(2022年9月21日 18:45)

こんにちは。SOLの余語です。
9月7日の記事では、日本語を母語とする人がアカデミックな文章でよく使われる英単語の意味を確認したり覚えたりする際に、英英辞書ではなく英和辞書のように日本語での説明があるものを使うことによって学習がスムーズに進むと述べました。言語の違いに関係なく学問的なコミュニケーションで使われる言葉は抽象度が高く、意味もトピックなどによって変化するものもあります。このようなものの全体像を把握するには母語を使うのが望ましいと考えられますが、取り扱っているものの難度が上がるにつれて母語での語彙を蓄積するための取り組みも必要になります。

さて、以前の記事でも述べましたが、Cambridge University Pressが出版しているIELTSの問題演習のためのテキストなどを見ると、大学の専門的な学びを通じて得ることが期待される知識がないと正しく読解するのが難しい文章がReadingで出題されることがあります。例えば、IELTS ACADEMIC 12には、イギリスにおいて2008年のリーマン・ショック後に提案された企業統治に関する改革の是非がトピックになっているものがありますが、ここでは通常、日本語では「取締役」と訳されるdirectorという語が、社外から迎えられ経営陣(management)が適正に業務を行っているかといったことを監視する「社外取締役」という意味に限定されて使われており、このような企業の組織のあり方に関する日本とイギリスの違いから、社会人経験のある大人でもスムーズに読み進むのが難しいのではないかと思います。

この教材を使って授業をする際、英語運用能力の高低に関わらず、内容が理解できなかったと言う人が多いので、企業の組織のあり方をざっと説明するところから始めるのが通常ですが、実際のテストで高いスコアを取っている人にインターネット上にある英語で書かれた解説を渡しても、「ぼんやりとしか分からなかった」という反応が返ってくることがほとんどで、このような人はその後に日本語での解説を加えると、理解度が大幅に高まるようです。

また、日本語を主な使用言語とする教育機関で学習した期間が長いにもかかわらず、「取締役」や「株主」といった概念に対するイメージを持ち合わせていない人は英語でそれらについて説明されてもよく分からないことが多いですし、まずは現代社会における企業とはどのようなもので、意思決定などがどのように行われるかといった点について長い時間をかけて平易な日本語で確認することが必要になります。

上の事例が示しているように、アカデミックな英語運用能力を測る試験で出題される文章を読解していく際に必要となる知識についても、それを理解するための取り組みを母語である日本語で行った方が効率的であるのが一般的であるようですし、そのためには日本語の運用能力を高めたり語彙を蓄積したりすることが重要な役割を果たすと言えそうです。

それでは、TOEFL iBTやIELTS、TOEICなどの英語運用能力試験の対策についてご質問などがある場合には、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

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