こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、TOEFL iBTやIELTSのReadingで出題される文章を正しく読解するために必要なものの一つとして、そこで扱われているトピックに関する知識を挙げました。IELTSでは、passage 3で社会や学問に関する知識の蓄積があることを前提とした問題文が見られますし、幅広い分野に関する文章が出題されるというのはTOEFL iBT、IELTSに共通した特徴です。問題演習などを行った後の復習においてそこでテーマとなったものについて確認する時間が取れるのが望ましいでしょう。
さて、昨年末にYahoo Japanで、報道各社が現代の社会問題と考えるものについて作成した記事の特集がありました。その中で、東海地方のあるテレビが工場労働者として日本にやって来た日系ブラジル人が直面している問題を取り上げているものがあり、そこでは子供たちの教育問題に焦点が当てられていました。最近、このような家庭で育つ子どもが不登校になるケースが頻発しているにもかかわらず、日本の学校にはそのような児童、生徒をケアする法的義務がないことが取り上げられることが多いが、母語ではない言語で教育を受けることに困難を感じる人が多くいることは以前から指摘されており、高校入試の際にもその影響が見られるそうです。
僕が読んだ記事は、このような問題について概観した後に、その解決策の一つとして彼らの母語であるポルトガル語で教育を受ける機会を確保するということを提案していました。その理由としては、移民が世界各地から来ることで多文化社会が形成されていると言われるカナダなどで行われた研究の成果(これについては後で紹介します)に加えて、日本で生まれて学校教育も小学校から日本語でずっと受けていた人の日本語運用能力が、ブラジルの小学校でポルトガル語を用いて一定の期間教育を受けた経験のある人に比べて伸びが鈍く、高校入試を受ける時点で逆転されてしまう事例がよく見られるということにあるようです。
日本社会では、グローバル化の進展などによって英語教育に力を注ぐべきであると主張する人に注目が集まりがちで、多くの人にとって母語である日本語の教育の必要性に関しての論考などが取り上げられることは少ないですし(新書などの形でそれなりの数が出版されていますが、その分野に興味のない人の目にふれることはないでしょう)、日本語の運用能力と外国語の学習のつながりに着目しているものも、上で見たような労働者として日本に入って来た外国人とその家族が直面する問題に関するもの以外ではあまり目にすることはありません。一方で、他の記事でも述べましたが、上智大学外国語学部の様々な学科や慶應義塾大学文学部のように外国語教育を専門的に扱うところでは、帰国生入試などにおいて受験生の日本語運用能力のあり方を合否を判定する際の材料の一つとしていることが珍しくありません。
ここまで、TOEFL iBTやIELTSのReadingでスコアアップするためには、問題演習に取り組むだけでなく、その教材を使ってしっかり復習をすべきという話をしてきたので、少し話題が横道にそれてしまいますが、ここから数回の記事で英語学習と母語である日本語の運用能力の関係について考えてみたいと思います。
それでは、TOEFL iBTやIELTS、TOEICなどの英語運用能力試験の対策についてご質問などがある場合には、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html
TOEFL iBTやIELTSを受験するための学習の進め方について(23) ―英語学習の勧めvol. 192―
(2022年7月1日 17:45)