今から帰国生入試やAO入試に向けて準備すべきことについて(11) ―帰国生大学入試についてvol. 321―

(2022年5月20日 17:00)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、大都市圏の大学が次々に設置している英語を主な使用言語とした9月入学プログラムを進学先とするかどうかの判断は慎重に行うべきと述べました。そのようなプログラムの多くは、カリキュラムの作成についてしっかりとした方針がなく、集まった教員の専門分野に関する授業をそのつながりなどに関係なくただ並べているに過ぎないように思えるからです。

そこでも述べた通り、日本の大学と同じような9月入学プログラムを作るのは、メディアなどでよく取り上げられる世界の大学ランキングで順位を決める基準に留学生の比率や英語で行われる授業の数が入ることが多いため、国際的な潮流になっているようです。アジアだけでも、急速なペースで経済成長を遂げている中国を始めとして、韓国やタイ、マレーシアの大学でもこのような動きが見られ、英語圏出身の教員を招致するための国際競争が激しさを増しています。

その結果、日本の大学の9月入学プログラムでは、日本人の教員が授業を担当することも少なくありません。早稲田大学政治経済学部のEDESSAのように欧米の大学で教鞭を取った経験がある人を数多く集められれば、それでも問題はないのかもしれませんが、他の大学や学部・学科ではそのような経済的な余裕がないところも多く見られ(EDESSAにしてもこの大学が自分の持っているリソースを政治経済学部に集中させているから可能になるのではないかと僕らは考えています)、そのようなところに進学したOBOGから英語での授業を担当する日本人の教員が「英語でのコミュニケーションに不慣れである」、「発音が悪くて何を言っているのか分からない」という話をよく聞きます。

これは、早稲田大学国際教養学部のように早い段階から英語での授業を開始したところでも以前からよく耳にするものであり、日本社会では高い評価を受けている学者が「発音が悪いというだけで学生が話を聞いてくれない」、「英語圏からの留学生が教室での主導権を握ってしまい授業の内容に深みが出ない」と嘆いているという文章を読んだことがあります。ある言語が標準的ではない発音で用いられた際にその内容を理解できるのは母語話者に近い運用能力が必要になることは、日本人がTOEICの対策を行う際にインド人の英語は聞き取りにくいという反応を見せることでも分かりますが、それを踏まえると特に海外滞在年数の短い人は上で述べたような形で行われる授業において得られるものは少ないと言ってもいいかと思います。

また、そのような問題を回避するために、多国籍企業や国際機関で長年働いた経験を持つ日本人を教員として雇う大学もありますが、例えばそのような人が授業を担当することが多い青山学院大学の地球社会強制学部に通うOBOGは「(自分を含めた)多くの学生は、学問的な話を聞きたいのに、国際的な場での体験談が授業内容の中心になってしまい、学ぶものが少ないと感じている」という不満を述べることが多くあります。このようなことを考えても、日本の大学の9月入学プログラムに進学するのには慎重になるべきでしょう。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
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