こんにちは。SOLの余語です。
昨年7月22日の記事では、TOEFL iBTやIELTSのReadingで出題される文章を正しく読むためにはそこで使われている単語の意味を適切に把握する必要があるが、前後の文の内容や文章全体のテーマからその意味を推測する力がないと誤った方向に進んでしまう場合があることを説明しました。英語は様々な意味を持つ単語が多くあるので、上で述べたような力を伸ばす取り組みは重要なものと言えるでしょう。
さて、TOEFL iBTやIELTSのReadingの問題文やそれ以上に学問的な文章を読んでいると、文の構造を正確に理解するのに文脈を正しく捉える力が必要なものが見られます(学問的な文章は一つ一つの文が長いことが多いので、そのような現象が起こりやすいようです)。例えば、旺文社が発行している「Rise英語長文読解演習3(標準~難関編)」という問題集にアメリカ人が科学に不信感を抱いていることをテーマにした文章があり、その理由を検討する段落に以下のような文があります(カッコの中はtheyやitが指しているものです)。
Or maybe they(many Americans) dislike its(science) democratizing power, just as conservative elements distrusted the ascendancy of human logic in the eighteenth century over divine inspiration which help spur the French and, ironically, American revolutions.
この文で問題になることの一つがwhichが何を指しているかです。通常、日本の学校ではwhoやwhich、thatといった関係代名詞と呼ばれるものはその直前に置かれている名詞を指すことが多いと教わります。しかし、whichの前にあるのはdivine inspirationであり、これがwhichの指しているものだと考えてしまうと、「フランス革命や皮肉なことにアメリカ独立革命が生じるよう促したのは神や精霊によるお導きである」ということになってしまい、文章全体のテーマを考えるとironically(皮肉なことに)が入っている意味がよく分からないということになってしまいます。
しかし、もう少し範囲を広げてwhichがthe ascendancy of human logic (in the eighteenth century over divine inspiration)を指していると考えれば、「アメリカ人には科学が嫌いな人が多いのに、人間の理性(という科学を生み出したもの)の地位の向上によってアメリカ独立革命を達成した」ということになり、the American revolutionの前にironicallyという単語が入っているのはなぜかという問題に明確な答えを出すことができます。このように、(特に様々な要素が入り組んだ長い文では)前後の文の内容や文章全体のテーマを把握しておくことは一つ一つの文の構造を正しく理解することにつながることが少なくないのです(上の文のthe Frenchが「フランス人」という意味で用いられているのではなく、revolutionsにかかるものであるということを理解するのにも同じことが言えると思います)。
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TOEFL iBTやIELTSを受験するための学習の進め方について(19) ―英語学習の勧めvol. 188―
(2022年1月28日 17:30)