こんにちは。SOLの余語です。
9月12日の記事では、教室に通ってくる生徒の様子を見ていても、最近の若い人に関する本などを読んでいても、周りの人との関係性を深めたいと考えているにもかかわらず、それを実現するためのコミュニケーションには及び腰になってしまう人が増えている傾向が確認できると述べました。もしこれが社会全般に広がっているものなのであれば、それに対応する手立てを検討していかなければならないと思います。
さて、先日、この4月から外資系の大手金融機関に就職したOGが教室に訪ねて来た際に、最近どのような人が帰国生大学受験セミナーで学んでいるのかについて尋ねられたので、上のような話をしました。すると、そのOGは意外なことを聞いたという表情を浮かべた後で、「私が大学を卒業する段階で一緒にインターンシップに参加したり、同じ時期に入社することになったりした人は皆、様々な人とコミュニケーションを取ることを通じて人間関係を広げていくことに積極的である」という言葉を続けました。
確かに、そのOGは帰国生入試を受験するためにこの教室に通っていた頃から現在に至るまで、しっかりとしたコミュニケーションを通じて周りの人との関係性を深めていくことができますし、例年、そのようなことに積極的な姿勢を示す生徒もいることも事実です。それを踏まえると、相互扶助的なコミュニティーを形成する機会に恵まれている人が一定数いる一方で、現代的な情報技術などを十分に活用することができない人が増えている、つまり先行きが不透明な社会で安定した生活を送れる可能性がどれくらいあるかという点で格差が生じているのが現状だと言うことができるかと思います。
東京都立大学の宮台真司氏は、以前は人間が生きていくのに必要なものを確保していくための様々な取り組みに関して社会の構成員の支え合いによって行われたものが少なくなかったのが、社会の発展に伴って公共サービスの一部になったり市場経済に取り込まれたりしたことで、人々が相互扶助的なコミュニティーの必要性を意識しなくなったことを、若い人が周りの人とのコミュニケーションに積極的な姿勢を見せなくなった原因としています。また、日本経済が1970年代の後半辺りから成長のペースが鈍化してきた際に、人々の関係を分断することでその規模を維持しようとしたことを指摘する論考も見られます。
僕もこのようなことが関係していることは間違いないと思いますが、それだけだと上で述べたような格差がある状況は十分に説明できないような気がします。教室で出会う18・19歳の人たちの様子を見ていると、他の人と頻繁にコミュニケーションを取っている人の特徴の一つとして自己評価(self-esteem)が高いことが挙げられる一方で、「自分がつまらない人間だ」とか「自分は周りから評価されるものを持っていない」と考える人が急激に増えている印象があるのですが、これが大きく関係しているのではないかと考えています。
さて、東京23区やその近郊では新型コロナウィルスの感染拡大が収まってきているようですが、実際に罹患した人の話を聞くと後遺症に悩むケースが若い人の間でも少なからず見られるようです。今は帰国生入試やAO入試が最も多く行われている時期ですので、生徒にも感染防止を徹底するよう話しています。
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現在の教室の状況について(2022年10月3日)―SOL帰国生大学受験セミナーについてvol. 209―
(2022年10月3日 19:00)