こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、「繰り上げ卒業」を積極的に認めるカナダのブリティシュ・コロンビア州の高校に単身留学した人が青山学院大学の海外就学経験者入試に出願した際に直面した問題を取り上げました。日本の大学の入試担当者には融通が利かなかったり海外の教育制度に対する理解が不足していたりする人が少なくないため、その実情などについて説明しても判断が覆らないことがよくあります。青山学院大学のようなところを今年受験予定の人は卒業や在籍期間に関する証明書に書かれていることを確認した方がいいでしょう。
さて、日本の大学の帰国生入試で出願資格を得るための条件として、今回取り上げるのが卒業した高校が採用しているカリキュラムにおける大学入学資格を取得しているかどうかです。アメリカやカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、そしてヨーロッパ諸国のように帰国生入試を受験する人が多くいる国の教育制度では、日本とは違い、高校を卒業するだけでは大学入学資格を得ることができず、そのための統一試験などを受けなければなりません(IB Diplomaコースのように、高校がある国や地域に関係なく大学入学資格を取れるというカリキュラムもあります)。
日本でも帰国生入試において出願手続きの際にこのような試験の成績の提出を求める大学があり、その一つである慶應義塾大学の入試要項には、「1.(出願資格を得るための)共通条件」の③で、
③滞在国・地域の学校教育制度に基づく大学入学資格を有する者
という条件が定められており、別のページ(2021年度入試要項では21ページから25ページ)に海外の様々な教育制度においてどのような統一試験を受けていたり資格を取得したりしていなければならないのかについて詳細な説明が見られます。また、このような条件がある大学では、卒業した高校が採用する教育制度に大学入学資格取得のための統一試験がない場合にアメリカのCollege Boardが実施しているSATを受験しなければならないとしていることがあります(慶応義塾大学はカナダの高校に通う人にSATのスコアの提出を義務付けています)。
この点については、インターネット上で全ての大学の帰国生入試を受験するのに必ず満たさなければならないもののように書いているサイトが見られます。確かに、以前は早稲田大学も帰国生入試で出願資格を与えるための条件の一つとしており、大学入学資格を得るための統一試験を受験していないケースでは、なぜそうなったのかについて説明する書類を作成しなければなりませんでした。しかし、現在では4月入学者を対象にした帰国生入試で出願資格を与えるのにこのような条件を設けている大学は少数で、首都圏の有名私立大学だと上で挙げた慶應義塾大学と国際基督教大学(ICU)、国公立大学でも東京大学と横浜国立大学の経済学部くらいです。
また、大学入学を得るための統一試験に関する条件が見られる大学をそれが存在しない教育制度の高校を卒業した人が受験したいと考えている場合に、海外の大学から入学許可が出ていることを証明できれば、SATのスコアを提出できなくても出願資格を認める大学もあります。例えば、昨年、カナダのブリティシュ・コロンビア州で高校を卒業した人が上のようなことを証明する書類を横浜国立大学の経済学部に提出したところ、帰国生入試の受験をすることができました。これから受験する大学を決めようと考えている人にはこれらの点にも注意してもらえればと思います。
それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html
帰国生入試の出願資格を得るための条件について(10)―帰国生大学入試についてvol. 307―
(2021年7月24日 15:25)