こんにちは。SOLの余語です。
前回は、TOEFL iBTやIELTSのReadingで出題される文章を速く正確に読むために必要な文法に対する理解を高めるために、多くの帰国生にとって母語である日本語で書かれたテキストを読むことが学習者に大きな負担をかける可能性があるということを述べました。このように考える理由は、日本で出版されている教材の多くが様々な文法事項について「理解させる」ことより「覚えさせる」ことに重点を置いていることにあります。
いくつか前の記事でも述べましたが、このような日本の英文法教育の実情には以前から強い批判があり、そこでは「文法を教えるのは英語運用能力の向上を妨げる」というような過剰な反応も見られました。しかし、どのような言語であってもそれをあらゆる場面で正しく使いこなすことは文法をある程度理解しなければ難しいことですし、日本語と英語のように言語学的な距離が大きく開いている場合にはそのような可能性が一層高まります。このような認識に基づいて、主に英語を母語とする人々がどのようなイメージでそれを使っているのかを言語化もしくは図式化して説明する認知言語学の立場から新しいタイプの教材が日本でも出版されるようになりました。
例えば、Amazonで「英文法」と検索すると様々な文献が数多く出て来ますが、そのリストの1番目に表示される大西泰斗氏とポール・マクベイ氏の『一億人の英文法』(東進ブックス)や、その次にランク付けされている時吉秀也氏の『英文法の鬼100則』(明日香出版社)はいずれも認知言語学の研究の中で生み出された知見に基づいて書かれたものです。また、以前から高校の授業用の教材として使われている『Forest』(こちらは絶版になりました)や『総合英語Evergreen』(いいずな書店)といったテキストで見られる説明にも上で述べたような観点を意識したものがあります。
僕も学習に対する負担を軽減しながら文法に対する理解を生徒に高めてもらうために、これらの本を読んできましたが、いずれも様々な文法事項の関連性を重視する内容になっており、「なぜこれらのルールが生み出されてきたのか」、または「ある場面で特定のルールが適用される理由は何か」といった点に対する理解を深めるのにとてもよい教材だと思いますし、海外の高校で学んでいる人で日本から持って行ったという人も少なくないはずです(実際に昨年の12月からオンラインのグループ指導を受けているオーストラリアの高校生が持っていました)。
ただし、これらのテキストにはいくつか問題点もあり、その一つがページ数が多いということで、例えば『一億人の英文法』は字が大きいものの700ページ近い文量がありますし、『英文法の鬼100則』も400ページを超えるものになっています。また、実際に読んでみると分かるのですが、これらのテキストは「中学校や高校、大学などで英文法を学んだ経験はあるが、苦手意識や十分に理解ができなかったという印象を抱いた人」を対象とした「学び直しの機会」を提供することが主な目的となっており、文中にも文法に対する知識を一定程度持っていることが前提になっている箇所が多くあります。
これらのことを考えると、どのような部分をまずは優先して読むべきか、そしてそこでの説明がどのような内容のものかといった点に関してアドバイスができる人がいないと、英語を学び始めたのが小学校高学年や中学校からという人には一人で学習を進めるのが難しいのではないかと思います。
それでは、TOEFL iBTやIELTS、TOEICなどの英語運用能力試験の対策についてご質問などがある場合には、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html
TOEFL iBTやIELTSを受験するための学習の進め方について(15) ―英語学習の勧めvol. 184―
(2021年4月28日 19:10)