こんにちは。SOLの余語です。
前回は、TOEFL iBTやIELTSのReadingで出題される文章を速く正確に読むために必要な英文法の理解について、仮にそれを学習する場に英語以外の言語を母語とする人を教えるための専門的な知識を習得している英語圏のネイティブがいたとしても、彼らが日本語でコミュニケーションを取れないのであれば、効率よく学習を進めることが難しいと感じる人がいてもおかしくはないということを述べました。語順に対するこだわりの有無だけを考えてみても分かると思いますが、英語と日本語は言語学的に大きく異なる言語であり、日本語を母語とする人にとっては日本語を用いながら英文法を学んだ方が学習のプロセスが順調に進むというケースが多く見られます。
海外の高校で学んでいる人が日本語を用いながら英語の文法を学ぶという場合、日本語で書かれたテキストを読むということが考えられます。しかし、特に日本の中学校での英語の授業が面白く感じられないという理由で単身留学した人の中にはこのような形で学習することに前向きな気持ちになれないという人は少なくないと思います。そのように感じられる理由の一つに、日本で使われている教材が英語の文を構成するルールの一つ一つの結びつきを説明していくことよりも様々な言語に関わる現象を網羅することに重点を置いており、「理解すること」ではなく「記憶すること」を求めるものになっていることが多く、学習者が大きな負担を課されているように感じられることがあります。
例えば、そのようなテキストの「to 不定詞(to doという形のことです)の副詞用法」という項目を開いてみると、「動詞や形容詞、文を修飾する用法である」と述べられた後に、「目的」や「結果」、「原因や理由」といった典型的な用法についての説明とともに以下のような例文(いずれも研究社新英和大辞典やジーニアス英和大辞典などから抜粋)が提示されます。
<目的>
He went to Australia to make his fortune by sheep-farming.
(彼は牧羊業で一財を築くためにオーストラリアに行った)
<結果>
He went to the store, only to find it closed.
(彼はその店に行ったが、閉まっていた)
<原因や理由>
He looks quite happy to award them the top prize.
(彼は彼らに最優秀賞を与えることができてとても嬉しそうだった)
多くの場合、これらの一見意味が大きく異なる形でto doが用いられることを、「同じ形になっている以上何らかの共通した意識があるはずだ」という観点から説明することがないため、学習者としては「to不定詞の副詞用法にはいくつかの意味があり、一つ目は…」というように一つ一つの用法を独立してただ暗記することが求められることになります。しかし、英語の文章を正しく読むために確認しておかなければならない文法事項は(日本の大学の一般入試で見られるほどではないとしても)多くあり、このような方法で学んでいくことは学習者に大きな負担をかけることになります(このようなことを踏まえて、説明を非常に簡潔な形で行うものも見られますが、そのようなテキストのほとんどは説明が十分なものとは言えません)。
そして、英文法を学ぶことが多くの学習者にとって「面倒くさい」ものになり、継続的な学習を避けるという方向に彼らを導くことにつながるのです。そのため、日本語で書かれた一般的なテキストを用いて自習を行うことにも慎重な立場を取らざるを得ないということになるのだと思います。
それでは、TOEFL iBTやIELTS、TOEICなどの英語運用能力試験の対策についてご質問などがある場合には、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html
TOEFL iBTやIELTSを受験するための学習の進め方について(14) ―英語学習の勧めvol. 183―
(2021年3月24日 17:40)