受験する大学や学部・学科の選び方について(2021年版)(1)―帰国生大学入試についてvol. 290―

(2021年3月12日 19:25)

こんにちは。SOLの余語です。
昨年の4月から8月にかけて「受験する大学や学部・学科の選び方について」というタイトルで18本の記事を掲載しました。受験生の多くが直面するこの問題について、自分が強い学問的な関心を抱けるものは何かということをじっくりと時間をかけて検討していくべきだと僕らは考えています。また、その過程において様々な本を読むといった取り組みをした方がよいので、昨年掲載した記事を帰国生入試の受験が始まる半年前というこの時期にいくつかのグループに分けてリンクを張ろうと思います。

さて、昨年、僕の知人から自分の子供が大学受験に向けた準備に対して積極的な姿勢を見せないがどうすればいいのかという相談を受けました。そこで受験生本人と話をする時間を持ったのですが、親に受験する大学や学部・学科を限定されてしまっており、それが自分に合ったもの、もしくは本当に学びたいことかということを検討する機会を与えられなかったし、親が受験を認めてくれるものを大学受験における目標としてしまうことが正しいかについて確信を持てないことが上で述べたような姿勢を見せる要因の一つであることが分かりました。

このような答えを受けて、子供が自分なりに進路を模索する過程に上のような形で干渉するのはやめた方がよいのではという提案を知人にしてみました。しかし、それに対する彼の返答は「社会に対する知識は大人である自分の方が持っているし、世の中は理不尽なことで溢れかえっており、自分の希望通りに物事が進まないこともよくある。大学受験において受けてもいい大学や学部・学科を制限されることを通じてそのようなことに対する耐性も付けてもらいたいと考えている」というもので、子供の進路に関する親の考えを優先させる方針を変えるつもりはないようでした。

しかし、上で述べたような状態は、このブログの記事で取り上げることの多い「大学受験が『他人事』になってしまっている」ということの典型的なものであり、学習意欲が内発的に生じることにつながらないという点で問題です。また、確かに日々の生活の中で理不尽だと感じられる物事は多くありますし、精一杯努力をしても報われないことがありうることを考えると、人によっては大学受験もその一つに数えられるかもしれません。しかし、人間が納得がいかない状況を乗り越えるには、それにかかる時間や労力を忘れて探究することができるもの(自分の「軸」になるものと言ってもいいかもしれません)が必要であり(養老孟司氏によればこのようなものを複数持っておくことによって人生が充実したものになるそうです)、大学受験の段階でも自分の学問的な関心が向かう先を制限などを付けない形で自由に模索できることが望ましいと言えるのです。

このような話をしたところ、知人も子供が自主的に進路を考えることの重要性を理解してくれたようで、その後は受験生も学習に対するやる気を取り戻し、第一志望の大学に合格することができました。やはり大学入試に挑む本人が自由に進路を考えることは受験準備を充実したものにすることにおいて重要であるようです。

<「受験する大学や学部・学科の選び方について」シリーズの記事へのリンク>
「帰国生大学入試について」vol. 247248
これらの記事では、受験する大学や学部・学科を選ぶ際に自分がどのような分野に学問的な関心を抱けるかについてじっくり検討することの重要性を、受験や大学生活を充実したものにするという観点から説明しています。

「帰国生大学入試について」vol. 249250251
最近、就職活動で有利になるので経済学部や経営学部などの社会系の学部を受験すべきという大人が多くいますが、それは本当なのかという問題を経団連などが公表しているデータで検証しています。また、そのような社会の風潮に乗っかってしまうことの問題点についても説明しています。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html

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