こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、日本の外国語教育における中核的な大学である東京外国語大学の帰国生等特別推薦選抜を取り上げました。この大学は学ぶことのできる外国語が他大学の外国語学部では見られないほど多様であるにも関わらず、この入試においては大学が指定する英語運用能力試験の成績を提出しなければならないことに加えて、外国語教育を主な専門分野とする大学や学部では日本人にとって外国語を学ぶ際の基礎となる日本語運用能力が重視される傾向が見られるため、小論文試験の準備に力を入れなければならないことに注意しましょう。
さて、今回は東京外国語大学と同様に、日本の学術研究において中心となる役割を果たしているものの一つとされる一橋大学の外国学校出身者選抜の特徴をお知らせしたいと思います。一橋大学は社会科学に分類される学問分野を主に扱うところであり、法学部や経済学部、商学部に加えて、他の大学では独立した学部になることが少ないものの、社会が抱える問題に対して特定の学問的なアプローチにこだわらず多角的に考察を深めることができることで人気のある社会学部が設置されています。多くの国公立大学で広く見られるような少人数制の授業が中心となった学習環境がありますし、教師も社会で高い評価を受けている人が多いので、僕らにとってもお勧めの大学の一つです。
この入試における注意点は、出願資格を認める条件に「(海外への)渡航の開始が保護者の海外転勤等のやむを得ない事情によるものであること」というものが入っていることにあります。日本の大学における帰国生入試は、元々保護者の転勤によって日本語で教育を受ける機会を失った人に対する救済措置として始まったため、以前は国公立大学を中心に上で述べたような条件を満たさないと受験ができないものがあったのですが、このところ昨今の単身留学生の増加に合わせた対応する動きが見られます(例えば、以前に紹介した横浜国立大学の経営学部は単身留学生にも出願資格を与えるようになりました)。しかし、この大学では保護者が日本に帰国した後に単身で残留したという場合などには帰国生を対象とした入試の出願資格を認めるものの、今でも単身留学生は受験できないという点に注意してください。
合否の判定は2段階の審査で行われます。第一次審査の一つである小論文試験はA4の用紙で5、6枚の長さの社会科学の研究者が書いた問題文に対する論述・読解問題が出題されるため、これに対応するための読解力などを習得するための取り組みが必要になりますが、合否をより大きな形で左右するのが英語試験です。この試験はこの大学の一般入試と同じものが問題になっており、英文和訳や文章の内容に関する説明を求める問題や、文法の理解を確認するもの、エッセイ、リスニングと様々な形で英語運用能力の高低を確認するものです。とは言っても、TOEFL iBTやIELTSで高いスコアを取っている人にとっては、内容的に難しいものとは言えないものであるため、例えば一つの説明問題に完全に誤った形で答えてしまうというだけでも不合格になる確率が飛躍的に高まります。この試験の過去問はいわゆる「赤本」で確認することができますので、受験を考えている人はより多くのものを解き、しっかりと復習を行うことなどを通じて、ミスをできるだけしないような力を付けることを目指すという形で対策を行うようにしましょう。
第二次審査は、第一次審査を通過した受験生のみを対象にした面接試験となっていますが、ここでは第一次審査の小論文試験で書いたことに関する確認が行われますし、出願手続きにおいて志望理由書の提出が求められていないことがあり、この大学で学びたいことなどに関する質問をされることが多くあります。面接試験に向けてはこれらの点についての自分なりの考察を深めていくのが望ましいと思います。
それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html
一橋大学の外国学校出身者選抜について ―帰国生大学入試についてvol. 286―
(2021年2月5日 18:50)