こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、大学の各学部・学科で研究されている学問がどのような視点、もしくはプロセスで現代社会において生きる人間が直面する様々な問題に対する考察を深めていくのかについての理解を深めるために、大竹文雄氏の『経済学的思考のセンス』(中公新書)のように研究者が自分の専門領域で行われている研究のあり方を説明した本を読んでみるのがよいということを述べました。自分の学問的な関心の向かう先が不明確な場合には、複数の分野のものにふれてみるのが役に立つと思います。
さて、今回は「自分が大学で何を学びたいのか」を検討していく過程という話題から少し離れて、帰国生入試やAO入試の受験の準備として読書をする際の注意点について説明したいと思います。IB Japanese A: literatureの授業などを履修していて文学作品に関するコメンタリーを書いた経験があったり、小説を読むのが日常的な習慣になったりしている場合でも、学問的な問題がメイントピックになっている新書などを読み始めた時になかなかスムーズに読み進めることができない、または内容を正しく理解できているかについて確信が持てないという感想を持った人は少なくないはずです。
学問的な文章では、日常的なコミュニケーションでは見聞きする機会が多くはない文語的な語彙や表現、そして大学受験の準備をする中で出会うものは初歩的なものであることがほとんどであるとは思いますが、各学問に特有の専門用語(日本語で書かれた文章には外国語から翻訳されたものが用いられることが多いので、通常の意味で用いられていないものも度々見られます)が用いられます。また、洋の東西を問わず、学問的な文章は一つ一つの文の構造が複雑なものになってしまうことも多いですし、日本の研究者の中には、英語圏の研究者と異なり、学問的なものを書く時でも一定の型を守ることに強い意識を置かない人もいるために、文章全体の構成が入り組んだものになってしまうこともあります。
それに加えて、研究者が書いた文章を読んでいると、これまでに様々な国や地域で起こった、もしくは現代社会で見られる現象や事件が取り上げられており、それに関する知識が十分に蓄積されていないと内容の理解が難しいと感じられることもあると思います。特に、読んでいる本が新書であるという場合には、ページ数がそれほど多くある訳ではないので、「ここで述べられている政府の決定の内容やその経緯については説明が十分でないので、よくわからない」と考えているうちに話が先に進んでしまうことも少なくないでしょう。
本をどれだけ読んでもその内容を誤って捉えてしまったり、多くのものを吸収できなかったりしてしまっては、自分の学問的な関心を探ったり、小論文試験の対策を進めたりすることが目的である場合には、あまり意味がないということになってしまいますので、少なくともそのような作業に取り組み始めた段階では時間をかけて、色々なことを調べたり、その文章で筆者が伝えようとしていることをその流れを踏まえながらじっくり考えてみたりすることが必要です。
一方で、そのようなことにあまり手間がかかってしまうと本を読み進めることに苦痛を感じてしまうことが考えられますし、前に読んだことを忘れてしまって話の筋が追えなくなることもあるはずです。それを考えると、行き詰まりを感じた時にはいつでも質問に答えてくれる大人がいるのが帰国生入試やAO入試の準備を進める際の最適な学習環境とは何かを判断する重要な指標の一つであると言えると思います。
それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html
受験する大学や学部・学科の選び方について(14) ―帰国生大学入試についてvol. 259―
(2020年7月24日 11:55)