こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、「大学で何を学びたいのか」ということを考える際には、すでに大学で学んだ経験のある、もしくは今も大学で研究を進めている周りの大人に「大学で何を学んだのか」、「なぜそれを学ぼうと思ったのか」ということなどを訊いてみるのがよいということを述べました。何かを悔いのない形で判断するには十分なインプットが必要になりますが、18、19歳くらいの人にはそれに当たる社会体験や社会で見られる様々な問題に対する知識、大学での研究活動のあり方に関する理解などが少ないのが一般的です。それを踏まえると、このような点についての蓄積がある大人(その中でも「反省的実践家としての教師」をいう姿勢を持った人)の話を聞くというのは自然なことのように思われます。
さて、自分の学問的関心の向かう先を明確にするためのインプットを得る手段としては、新聞や本などを読んで現代社会で生きる人々が直面する様々な問題の中でどのようなものを大学の研究者が取り上げているのかについて確認するということも考えられます。日本の大学のホームページでは、一つ一つの学部・学科で学ぶことができることを中心的な内容としたパンフレットを閲覧することができますが、そこで見られる研究活動の対象となっているものに関する説明のほとんどは例えば「環境問題」、「貧困問題」といった簡潔なもので(教員の専門分野に関しても「日本の政治史」、「移民問題」というような記述がなされるのみというところが多いです)、大学の授業で取り扱われる問題にはどのようなものがあるのかについて具体的なイメージを持つことが難しいという印象を持つ人は少なくないでしょう。
この点、新聞の論説記事や新書などでは、大学の研究者がその時々に社会の関心事となっている問題に関するそれぞれの専門領域の視点からの考察を一般の読者を主な対象と想定した形で展開した文章にふれることができます。例えば、毎日新聞は毎週日曜日に「時代の風」という様々な分野の研究者がその時点で関心を持っている問題についての考えを提示する記事を掲載していますし、朝日新聞でも「論壇時評」という一定の期間に公表された論考を紹介する特集が毎月組まれており、2016年4月から2019年3月までの社会学者の小熊英二氏が執筆を担当したものが新書の形で出版されています(『私たちの国で起きていること 朝日新聞時評集(朝日新書)』)。他にも、文藝春秋社から一年に一度出される『日本の論点』のように様々な研究者が多岐に渡る論点について書いた文章を一冊の本にまとめたものを読んでみるのもいいかもしれません。
また、本を読むのに苦手意識を持っている人は少しずつでもいいのでそれを克服するように努力をした方がいいのは確かである一方で、耳から情報を入れることも一つの手として考えられます。僕は毎晩、TBSラジオの「荻上チキ セッション22」というニュース番組を聞いていますが、この番組の後半の1時間はその時々に注目を集めている社会的な問題に関する特集に充てられており、そこではその日に取り上げられているものに関連した分野の研究者がゲストとして招かれ、新聞の論説記事と同じように自分の考えを述べるのを聞くことができます。このように、研究者が実際にどのような問題を考察の対象としているのかということについての理解を深めるための材料を提供してくれるものは様々なものがあり、それらにふれることは小論文試験の対策にもなりますので、できるだけ多くのものを活用していくのがいいと思います。
それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。
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受験する大学や学部・学科の選び方について(12) ―帰国生大学入試についてvol. 257―
(2020年7月12日 16:15)