こんにちは。SOLの余語です。
ここ4週に渡って掲載した記事で、母語と異なる言語が主な使用言語になっている大学への進学については慎重に判断するべきということを述べてきました。大学は、専門的な知識を身につけるだけでなく、論理的な思考力や批判的な分析能力を養うための場ですし、学生生活の中で自分の存在をその後も支えてくれるような人間関係を形成できる場でもあります。日本語と英語は言語学的な距離が大きく一方を母語とする人が(それが仮に知的なエリートであっても)他方を学習するのに大変な労力を要するとされていることを踏まえると、大学で学ぶという貴重な時間を無駄にしないために、「日本の大学は教育機関として十分な機能を果たしていないので、どのような人でも日本ではなく英語圏の大学に行った方がよい」という乱暴な議論や、新型コロナウィルスの感染拡大によって例年と同じような形で受験に臨むことが難しいという状況に煽られる形で進路選択をすべきではないと言えると思います。
ただし、先日の記事で紹介した大学のように、日本の大学には優秀な学生が集まって来ることに胡坐をかいて学生の知的な成長を促すためにはどのような教育プログラムが適切かという点について自己反省を怠っているところが見られるのは事実ですし、パンフレットなどを読むと自らの教育機関としての使命を就職のための専門学校と取り違えてしまっているように思える大学も存在します。また、自分が将来的に取り組んでいきたいと考えるテーマが英語圏の大学でないと学ぶことができない、もしくは英語圏の大学で見られるような社会的、文化的背景が大きく異なる人との共に学ぶことができる環境が自分にとって知的な刺激を最も与えてくれるなどの理由で英語圏の大学で学ぶことを強く希望している人もいるでしょう。
このようなケースでは、(日本の大学で学問的なものの見方や知識をある程度習得した上で英語圏の大学院に進学するという選択肢もあることを忘れない方がいいと思いますが)自分の英語運用能力が英語圏の大学で多くのことを吸収するのに十分な水準に達しているかをTOEFL iBTやIELTSといったテストで見た上で(前者であれば90以上、後者なら7.0以上というスコアがあるのが望ましいでしょう)、英語圏の大学で夏休みのような長期休暇期間に実施されることの多い高校生を対象とした学問の入門的な内容を扱うプログラムなどに参加して、自分が例えばそこでのディスカッションの中で議論の内容が深まっていく展開にしっかりとついていけているかどうかを確認してみるのがよいでしょう。
また、言語的な問題によって大学の授業の中で十分に理解できなかった点があったとしても、日本語で書かれた新書などの学問的なテーマを扱った文章を自力で読むことができるような日本語運用能力が身についていれば、授業後に自分なりの補習を行うことが可能になります。このようなことを考えると実際にそのような出版物を読むことによって十分な日本語の読解能力があるのかを確かめてみるのも重要になるのだと思います。
さて、今週のグループ指導や個別指導についてですが、東京23区やその近郊で新型コロナウィルスへの感染が判明した人が増加する傾向にあります。ただし、これまでのところ爆発的な感染拡大というほどまでの状況には至っていないようなので、ここ2ヶ月と同様に公共交通機関を使って教室に来る場合、新宿や渋谷といったターミナル駅を使わない人には対面で受講してもらい、この条件を満たせないケースではzoomなどを使ってオンラインで授業を受けてもらうことにします。個別面談も同じ方針で行う予定ですが、大学進学についての方向性を考えている人にそのような機会を活用してもらえればと思います。
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11月9日から11月13日までのグループ指導について―SOL帰国生大学受験セミナーについてvol. 127―
(2020年11月9日 10:00)