こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、自分の母語ではない言語が主に使われる大学への進学は、その言語の運用能力が高い水準まで伸びている場合でも、学習者一人ひとりの状況に合わせて慎重に検討されるべきものであるということについて大学卒業後の就職という観点から考えてみました。今年は、世界各地での新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、現地の大学への進学を視野に入れているオーストラリアやニュージーランド、フィジーなどの高校を11月に卒業予定の人がいるはずですが、キャリア形成という視点からもそのような方向性に進んでよいのかをじっくりと考える時間を確保すべきだと思います。
僕が上のように考える理由にはここ2回の記事で述べたもの以外にもあり、その一つはこれからの社会で生じるとされる大きな変化に一人ひとりの人がどのように対応していくことができるのかという問題に関係しています。現代社会が先進国における少子高齢化や経済分野などにおけるグローバル化、気候変動に象徴されるような環境問題などの影響で第2次世界大戦後に築き上げてきた様々なシステムが劣化していくという問題に直面するであろうことは、新聞やテレビ、書籍、インターネットでふれることのできる情報を見る限り、政治的もしくは社会的な立場を超えて多くの人々が共有していると思われます。実際に、日本ではすでに高度経済成長期に主幹産業になった製造業の勢いに陰りが見え(衰退の一途を辿っているとする論者もいます)、非正規雇用で働く人の労働者全体に占める割合が4割を超えていますし、経済面での格差が拡大したり制度上「高齢者」に分類される人の数が増えたりする中で社会福祉制度の持続可能性に関する問題が生じてきています。これらの問題は深刻さの程度などは異なるものの、少なくとも先進国では共通して見られるものです。
このような逆境の中で安定した生活を営むための方法としては、経済的な面でいわゆる「勝ち組」になることが考えられますが、OECDなどの国際機関が発表している様々な社会における所得分布のデータを見ると、個人が生きている間に生じるあらゆる問題を金銭で解決できるような経済力を身につけられるのは一握りの人であるようです(その上、アメリカでOccupy Wall Street運動が起きたり大統領予備選でバーニー・サンダースが若者から大きな支持を集めたりする中で明らかになったことは、社会的な評価が高い大学を出たからと言ってこのようなグループに入れる訳ではないということでした)。一方で、社会的な制度の多くが破綻しても自給自足をするための技量と環境があればそれなりの生活を送っていけるという考え方もあるかもしれませんが、このような状況の実現可能性も(特にリスクヘッジができないという点で)低いと言わざるを得ません。となると、大多数の「普通の人々」にとっては「苦境に陥った時に身銭を切って助け合いができるような仲間を作っておくこと」が現実的な方策の一つだと考えられます。
このような人間関係の構築には、個人が日々の生活における様々な場面で見せる行動と並んで、言語によるコミュニケーションが大きな役割を果たします。そして、自分の抱えている考えや感情を他人によりよく伝え他人が言っていることを十分に理解するにはどのような言語を用いた方がいいのかは人によって異なりますが、「母語がそのような言語に当たる」と考えている人は少なくないと思います(実際に海外の高校に単身留学している人の中にはラインなどのアプリを使って日本にいる友人と頻繁に連絡を取っている人が多くいるようです)。大学は企業などと違い自分の立場などを考えず自由に人間関係を形成できる場ですが、そのような環境で主に使われている言語がどのようなものかということは、予測ができない点が多くある社会の中でこれから生きていく人にとっては重要な意味があるのではないかと思います。
さて、今週のグループ指導や個別指導についてですが、東京23区やその近郊で新たに新型コロナウィルスへの感染が判明した人の増加するペースが「微増傾向」にあるようですが、それでも爆発的な感染拡大につながるということは見られていません。そのため、ここ2ヶ月間と同様に、公共交通機関を使って教室に来る場合、新宿や渋谷といったターミナル駅を使わない人には対面で受講してもらい、この条件を満たせないケースではzoomなどを使ったオンラインでの受講ということにします。個別面談も同じ方針で行う予定ですが、大学進学についての方向性を考えている方にそのような機会を活用してもらえればと思います。
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11月2日から11月6日までのグループ指導について―SOL帰国生大学受験セミナーについてvol. 126―
(2020年11月2日 10:40)