TOEFL iBTやIELTSを受験するための学習の進め方について(9) ―英語学習の勧めvol. 178―

(2020年11月18日 17:05)

こんにちは。SOLの余語です。
「英語学習の勧め」のvol. 174からvol. 177では、TOEFL iBTやIELTS、TOEICのReadingで出題されるような文章を速く(問題に答えられる程度で)正確に読解するには意味や用法の理解できる単語の量を増やすことが重要であるということを説明してきました。(特に日常的な)口頭でのコミュニケーションでは使われるものが学問的な文章に比べると数が相当に限定されますので、日本で多く出版されている単語帳で自分に合ったものを選んで毎日コツコツと学習することが大事ですし、問題演習に使った教材に出てくるものの中に意味の分からないものがあった場合には辞書で調べておくべきです。

さて、英文読解に関する上で述べたような能力を支えるものには蓄積した語彙量の他に、文法に対する理解が挙げられます。ある言語における文法には一つの文の中で述べられている現象が起こった時点やそれに対する話し手の態度の示し方などについて様々なルールがありますが、文章を読んでいく際に最も重要なのが語と語、文と文の間の関係性を規定するものです。このようなルールに対する理解の度合いが高ければ、文の構造や内容を隅々まで正しく理解できるだけでなく、文を読み進めていく流れの中でその先にどのような種類の語や表現、文が出てくるかが予測できるようになるため、文章を読むスピードが上がるといった効果が期待できます(日本人の英文を読む速度が上がらない原因の一つとして、一度文を読み終えた後にイディオムや構造を確認するために後戻りをしなければならなくなることが多くの研究者や教員によって挙げられています)。

日本では、グローバル化の進展で英語による会話能力が重視されるようになる中で、文法の学習を「スムーズな発話を妨げるもの」と捉える人が増え、中には「日常生活(もしくは学校生活)におけるコミュニケーションを取る中で文法を身につけていくことが可能であり、そのような習得のあり方が望ましい」というような主張まで見かけるようになりましたし、インターネットで様々な記事を読む限り、今でもこのような考え方を持っている人は少なくないようです。しかし、最近ではそのような流れにも徐々に変化が見られ、確かに従来日本の中学校や高校で見られた文法の指導には難関大学の一般入試で出題されるものが英語を読み書きする際に重要度が低いと考えられるものにまで及んでいることの影響が見られるし、「理解すること」よりも「覚えること」に重点が置かれているという問題点があるものの、会話をする場面であっても十分な内容を伴った形でコミュケーションをするには文法の学習が必要であるという見方に基づいた教科書やテキストが目立つようになりました(今でもAmazonなどでベストセラーになっている大西泰斗氏の『一億人の英文法』がその代表例です)。

口頭による発話と比較すると、文章になっているものは時間をかけてその成り立ちを分析することができるため、一つ一つの文が長くなり構造も複雑になる傾向があり、TOEFL iBTやIELTSなどのReadingで出題されるような学問的な文章ではそれがより強く表れます。そして、日本語と英語の言語学的な距離が大きく文法事項について共通した認識が基礎となっているものが少ないことを踏まえると、特に英語圏の国での滞在歴が短い人は文章を読解する際に理解しておかなければならないものについて体系的に学習する必要があると言えるでしょうし、滞在期間が長い場合でも日本語と英語で全く異なるルールを採用している部分に関する知識を補ったり、誤った理解をしている部分について正しい理解が得られるような取り組みをしたりすることが、学問的な英文を速く正確に読めるようになるためには重要なことになるのだと思います。

それでは、TOEFL iBTやIELTS、TOEICなどの英語運用能力試験の対策についてご質問などがある場合には、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

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