英語運用能力を伸ばすためには(2) ―英語学習の勧めvol. 163―

(2019年4月8日 18:00)

こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、英語圏の国やそのカリキュラムを採用する国際校で学んでいる人の中には、英語運用能力試験のスコアがある一定のところから伸び悩む人が少なからずいるということを述べました。スコアアップを阻む要因の一つには、もちろん上で述べたような環境で学んでいる期間の長さもありますが、それ以外にも様々なものがあり、それらが複雑に絡み合っている場合もあるので、望ましい学習のあり方を考えるには一人ひとりの学習者が直面している問題について個別的に考える必要があります。

このようなアプローチの必要性は、アカデミックな英語運用能力を身に付ける際に避けては通れない語彙の学習でも確認できます。このブログでは、日常的なコミュニケーションの80%は英単語500語を知っていれば理解できる一方で、学問的な文章の内容を正しく把握するには最低でも10,000語ぐらいの意味や用法が分からなければならないという英語学の研究における調査結果をこれまでも取り上げてきました。そして、そのような文章の基礎的なものを読んだり聞いたりするTOEFL iBTやIELTSでは、語彙に関する知識の蓄積量とスコアの間に少なくとも相関関係があることが、僕らが生徒の学習を見る中で確認できています。

意味が理解できたり自分で使えたりする単語の数を増やしていくことを目的とした学習については、人間一般の記憶に関する特性から多くの人に当てはまる望ましい学習のあり方が考えられます。しかし、具体的にどのような方法で学習を行うのが最も効率的に記憶への定着を促すのかには個人によって違いがありますし(例えば、発音しながら何度か書いてみるという方法がいいと言う人もいれば、学習の対象となる単語が実際に使われているのを見て意味を推測するのが自分に合っていると言う人もいますし、様々な形を場面ごとに使い分けることで学習がスムーズに進むケースもあります)、それに合わせた形で好みの教材も異なってきます。

また、一日で新しく覚えようとする単語の数は抑え、復習を頻繁に(できれば毎日行うのが望ましいです)、かつ多めに行った方がよいというのは誰にでも言えることです。一方で、個人の持つ記憶力などによって、どのようなペースで学習を進めていくべきなのかは異なってきますし、語彙の学習は長期的に取り組むべきものなので(一夜漬けのような学習法では、数日経つとほとんどのものを忘れてしまい、長期的に記憶に定着するものはあまりなかったという経験をした人は多くいると思います)、その間どのようにモチベーションを保っていくのが効果的であるかということも学習者一人ひとりの精神的な成熟度や好みに合わせて考えるべき問題です。

このように、単語の意味を覚えていくという進め方などについてそれほど迷うことがないように思えるものでも、学習者の特性を踏まえた上で考えるべきことが元々多くあるのです。そして、海外の高校で学んでいる人には、上で述べたようなことに加えて彼ら特有の問題が生じる場合があります。次回の記事では、そのような問題を取り上げようと思います。

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