こんにちは。SOLの余語です。
前回は、ここ2年間で早稲田大学政治経済学部のグローバル入試で見られた変化を取り上げました。この入試では英語運用能力試験の結果が一定の水準を超えれば合否にそれほど大きな影響を持たなくなった上に、日本語の読解論述試験が簡単なものになったため、合否判定の予測が難しくなっただけでなく、英語運用能力試験のスコアが高い人が不合格になってしまうことが増えたようです。
それに加えて、日本の大学入試全般に及ぶ変革が、経済学部や経営学部といった社会科学系の学部への入学を目指す帰国生の受験を厳しいものにしています。日本では現在でもよりよい雇用や教育環境を求めて地方から首都圏に流入する若者が多いのですが、首都圏のような都市に住む女性の特殊出生率は低くなるという一般的な傾向があるため、日本社会全体の人口が減少する問題が生じていると言われます。このような状況に対応するために、様々な形で地域振興のための政策が実施されるようになりました。
そして、その一環で、首都圏の大規模な私立大学に対して入学者数に関する制限がかけられるようになりました。この制限については最近、新聞などでも取り上げられるようになったのでご存知の方も多いかと思いますが(例えば、こちらの記事を参照してください)、ある年に実際に入学した人の数が入学定員数として公表されているものより一定の水準で上回ってしまうと、私立大学の有力な財源の一つである私学助成金が減額されるというもので、2016年に導入された後、満たすように求められる基準が年々厳しいものになっています。
これに対して、各大学は合格者の数を以前よりも絞り込むという形で対応しており、一般入試では予備校の模試で合格可能性が「Aランク」であると評価された大学に合格できなかった人が多くいると言われますし、合格した大学がない現役生がこれまでにないほどいるという高校がいくつもあるという話を我々も日本の高校に編入した生徒から聞いています。また、これまでよりも「繰り上げ合格」になる人の数も増えたため、一般入試を受験したSOLの帰国生大学受験セミナーの生徒には入学式の何日か前に合格通知を受け取った人もいます。
そして、このような入学者数の制限の影響は、少なくともAO入試や自己推薦入試といった受験する帰国生が多い入試形態にも及んでいます。これまで特別入試制度では、入学定員数が「若干名」とされている場合でも、大学側が求める水準を満たしている受験生が多くいる時には合格者数もそれに合わせて増やすということが珍しくありませんでした。しかし、ここ2年ぐらいの入試では、9月下旬以降に入試が実施される大学の経済学部や経営学部などの入試で英語運用能力試験の高いスコアを持つ受験生が増えたにもかかわらず、合格者数にはそれほど大きな変化がなかったようです。そのため、合格するのに必要なものの水準が高まり、以前であれば合格していたはずの人が弾き出されるという結果になりました。
経済学部や経営学部などの受験が厳しいものになっていることの背景には、今回の記事で取り上げたことに関係する事情がもう一つあります。次回の記事ではそれを紹介したいと思います。
それでは、今回の記事に関してご質問などがありましたら、以下のフォームやこちらよりご連絡ください。
【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html
ここ2、3年で見られた帰国生の大学受験における変化について(3) ―帰国生大学入試についてvol. 242―
(2019年4月24日 17:15)