ここ2、3年で見られた帰国生の大学受験における変化について(2) ―帰国生大学入試についてvol. 241―

(2019年4月11日 12:00)

こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、日本の高校に編入した人を含めた帰国生の日本の大学の受験について、ここ2、3年で変化が見られたということを述べました。多くの入試で英語試験が廃止され、TOEFL iBTやIELTS、TOEICといった英語運用能力試験の結果を提出するようになりましたし、9月入学入試やAO入試、自己推薦入試の枠が拡大し、一般入試でも帰国生が受験しやすいものが以前よりも増えているなど、いわゆる「グローバル化」に様々な大学が適応しようとする中で様々な変化が見られます。

このように変化が多く生じていても、受験準備のサポートの現場にいる我々は、人文科学系の学部の入試で合格するのに必要なものはそれほど変っていないという印象を持っています。しかし、社会科学系の学部、特に経済学部や経営学部、商学部への入学を目指す人の受験についてはいくつかの大きな変化が見られ、その結果、受験者の多いいくつかの有名大学で合格者に求めるものが以前と比べ高い水準になってしまいました。この状況を受けて、我々も一人ひとりの生徒の合格可能性の予測のあり方を見直しています。

そのような変化には、社会人になった時に役に立つものを大学で学びたいという「実学志向」が強まっていることもありますが、他に大きな影響があったものとしてまず頭に浮かぶのが早稲田大学政治経済学部のグローバル入試で見られた変化です。この入試が出願時に提出する英語運用能力試験の結果と日本語で行われる読解論述試験の出来で合否が決まるということは受験生の多くが知っていることだと思います。

このうち、日本語の読解論述試験は、元々帰国生が受験する入試で出題されるものの中では難度が高いものの一つで、大学生でも持て余してしまうこともある社会科学系の新書から問題文が出題され、それを正しく読解できていないと正解を導き出すことができない読解問題や図表の形で与えられるデータの分析問題、小論文問題に取り組まなければならないというものでした。ここ十年くらいで問題文が少しずつ読みやすいものになってきてはいましたが、それでも早稲田大学が教育環境の充実に最も力を入れている政治経済学部にどのような学生に入学してほしいと考えているかがよく伝わってくるものでした。

しかし、一昨年の入試から問題文が社会科学系の文章にある程度ふれている高校生であれば容易に読み解くことができるものとなり、それに合わせて出題される設問も比較的単純な読解問題だけになりました。以前は受験生の読解力や分析力、小論文を書くための論述力、政治学や経済学で問題とされているものに関する知識の蓄積によって結果に大きな差が出るものでしたが、ここ2年で出題されたものは多くの場合、問題文を読解する際に起きる見落としやケアレスミスがあったか、出題者が好む形で答えることができているかといった点くらいでしか得点差が付かないものになっていると評価できると思います。

また、以前は英語運用能力試験のスコアが高ければ、日本語の読解論述試験でのミスを(それほど多くはないものの)取り戻すことが期待できましたが、今はTOEFL iBTで言えば80以上のスコアを持っていれば、合否に大きな影響を与えることはなくなったように思えます。実際に、SOLでは、TOEFL iBTのスコアが80の生徒がより高いスコアを持つ人が不合格になる中で合格しており、日本語論述試験の出来のわずかな差が両者の間での合否の違いを生んだと我々は考えています。

このような変化の結果、この後に行われた青山学院大学や中央大学、明治大学政治経済学部の入試で、以前よりも高い英語運用能力試験のスコアを持つ人が多く受験するようになりましたが、他の変化の影響も重なりそこで求められるものの水準も上がったようです。次回は、経済学部や経営学部、商学部の受験に影響を及ぼした他の要因をお知らせします。

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