こんにちは。SOLの余語です。
先日、オーストラリアやニュージーランド、フィジーなどといった南半球の国の高校の最終学年に来年の2月から在籍する予定の人を対象とした帰国生大学受験セミナーの授業についてお知らせしました。そこでも簡単に述べましたが、南半球の国の高校に通う人が日本の大学を受験する場合には、その準備の進め方について注意すべきことがあります。今回の記事では、まず我々がそのように考える背景にある事情を確認しておきたいと思います。
オーストラリアやニュージーランドなどの高校に通っている人やその保護者の方にとっては確認する必要がないことかもしれませんが、これらの国の学校制度では1つの学年が2月に始まって11月の後半に修了するというスケジュールが組まれています。そのため、大学入学資格を取得するための統一試験を含む全ての学校成績が確定し高校を卒業する時期は10月、11月ということになります。そして、長期の休暇は12月から翌年の1月の終わりにかけての2ヶ月間だけで、それ以外はタームの切れ目に2週間ほどの休みがあるのみです。
一方で、日本の大学のほとんどは、5、6月に高校を卒業するという形でカリキュラムが設定されている北半球の国の教育制度に合わせて帰国生が受験することの多い帰国生入試やAO入試といった特別入試を実施しています。例えば、首都圏の難関大学とされるところでは、9月始めの慶應義塾大学や早稲田大学の帰国生入試やグローバル入試を皮切りに、10月中旬までに多くの特別入試の受験が終了してしまいます。また、慶應義塾大学のように帰国生入試に出願するのに高校のある国で大学入学資格を取得していることが必要になる場合、そのための統一試験の成績が出願手続き期間内に出ていない南半球の国の高校に在籍している人にはアメリカのSATの結果の提出が求められるのが一般的です。
※海外からの留学生を日本国内に多く受け入れたいという政府の方針などを受けて、英語で学位が取れるプログラムを設置する大学が増えています。その入試は大学に9月入学ができる人を対象にしたものがほとんどで、その時期にまだ高校の授業が続いている南半球の国の高校に通う人が高校を卒業する年に出願しようと思っても、そもそも出願資格がないということになります。
このように、南半球の国の学校制度のあり方と、日本の大学が特別入試の制度設計をする際に主な受験生と想定している人が在籍する高校のカリキュラムのあり方にズレがあるために、北半球の国の高校を卒業する人と同じ形で受験準備を進めようとすると、オーストラリアやニュージーランドなどの高校に通う人は不利な立場に置かれてしまいます。例えば、5、6月に高校を卒業すれば、最も早い日程で実施されるものの一つである早稲田大学の帰国生入試を受験するとしても、小論文試験や国語試験の準備に3ヶ月ほどの期間を切れ間なく費やすことができますが、南半球の国の高校には同じ時期に2、3週間しか高校の休みがありません。
また、以前は、高校のカウンセラーなどと交渉することによって、日本の大学の特別入試が集中的に実施される期間に長く日本に一時帰国することが認められるケースがありました。しかし、最近、出席日数を重視しているためか、最長でも入試本番の一週間前からのみ休んでもよいとする高校が増えており、入試前日に帰国して来るというケースも珍しくなくなっています。入試がある度に日本と滞在している国を往復するのは、受験生にとって肉体的にも精神的にも大きな負担になりますし、その間、順調に受験準備を進めることは困難になります。
帰国生入試やAO入試で合格するための重要な決め手の一つとなる小論文については、答案の作成の仕方に適切な型があり、それを口頭などで確認するのは2週間程度あれば十分です。しかし、SOLのように毎週新しい課題が3、4個出題され、以前の課題についても返却された答案に付けられたコメントや授業での解説を活かして書き直しをすることを勧めている環境でも、実際に小論文を書く際の望ましい型に基づいて採点者に評価される文章を作成できるようには、多くの場合、短くても2ヶ月くらいかかります(学問的な問題に関する知識の蓄積や、漢字、日本語の表現力などが十分でない場合には、それよりも長い時間が必要です)。
このようなことだけを考えても、受験する年の2月以降に短い休暇を何回かしか取れない南半球の国の高校に在籍する人の受験準備の進め方については、北半球の国の高校に通う人のものとは違う形で考えなければならないということになるでしょう。
それでは、オーストラリアやニュージーランド、フィジーなど南半球の国の高校に通う人の大学受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームやこちらよりご連絡ください。
【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html
南半球の国の現地の高校に通う人の大学受験について(2019年版)(1)―帰国生大学入試についてvol. 244―
(2019年10月23日 18:10)