こんにちは。SOLからのお知らせです。
SOLでは、以前からIB Japanese A: literatureや海外生の英文法学習に関する通信指導を実施しており、またオーストラリアやニュージランド、南アフリカといった南半球の国々の教育制度を採用する高校に通う生徒を対象に、彼らがSOLに通うことができない時期に小論文などの指導をメールのやり取りを通じて行なっています。
通信指導を行なうにおいては教師が直面する問題がいくつかあり、その中で学習成果を出すのに最も大きな障害になりそうなのが、①生徒の中に答案を提出しない人がいる(教師の側から見ると、指導の機会を失うということです)、②生徒が疑問を感じた時点で即時に対応することができない(時間が経ってしまうと何が分からなかったのかを忘れてしまうということは珍しくありませんし、学習したことの記憶への定着という観点からも生徒の疑問にすぐ答えられるのが望ましいと思います)という2点です。このような問題を解消するために、SOLではこの春からスカイプのチャットを用いた授業を上に挙げた通信指導コースで始めました。以下に、先日配信した帰国生大学受験メールマガジンで、前島がスカイプのチャットを用いた指導を導入した経緯を詳しく説明したものを転載しますので、関心のある方に参考にしていただければと思います。
【帰国生大学受験メールマガジン60号より抜粋】
前回のメールマガジン送信する前あたりから、新たな試みとしてSkypeによるchat授業を頻繁に行うようになっています。もともとはもっと前にSkype授業の接続が悪い際の代替手段として始めたのですが、現在は通信指導を有効に進めるための重要な手段として考え、積極的に進めています。
通信指導の最大の弱点は、受講者が定期的に問題に取り組んで答案や質問を送ってこないと、先に進めないということです(そのため、通信指導を経済活動としてだけ捉えれば、答案を送ってこない生徒の割合をあらかじめ見込んで受講費を安く設定することも出来ます)。たとえばSOLのIB Japanese A通信指導では、学校の時間割の中に存在しているのと同じように取り組む時間を決め、毎週の定期連絡日も決め、定期連絡日に答案が送付できない場合は疑問点を質問する、質問もない場合は進捗状況の報告をする、というように決めてありますが、それでも定期連絡日に何も連絡がない生徒はほぼ毎週います。
IB Japanese Aの場合は単位取得のために決まった提出物や試験があるので、通信指導の進度が遅くてもどこかの段階ではある程度その遅れを取り戻さざるを得ないのですが、英語文法通信指導のように純粋に文法の理解だけが目標だと、先に進まないまま大学受験を迎えて終了ということになりかねません。これでは我々が受講費泥棒ということになってしまいます。
受講者が定期的に取り組めないのは、本人に学習意欲がないからとは限りません。学習意欲と拮抗する別の欲求が弱ければ学習するでしょうが、強ければ学習意欲が負けてしまうだけです。
私は人間の欲求には二段階あると考えていて、一つめはたとえば、整理整頓なんて面倒だし、このままの乱雑さがむしろ自分にとって快適だ、というものであり、二つめは、本当は整理されている方が気持ちがよく、何事にも集中できる、というものです。二つめに「本当は」とつけましたが、私は一つめを表面的な欲求、二つめを本当の欲求と勝手に見なしていて、本当の欲求に気づいていない人には気づいてもらうこと(その人を促して一緒に整理に取り掛かるなどして)が重要だと考えています。
私はこの「欲求二段階説」を学ぶことに対しても当然適用しており、人間は(とりあえず、「若い人は」と限定してもよいです)当人がそう思っていようがいまいが、本当は学びたいはずだ、と考えています。そして、教師のすべきことは本当の欲求に呼びかけることだと考えて仕事しています。誕生日に個人別宿題をプレゼントしたりするので、迷惑がる生徒もいますが……。学ぶことには、強制されている、他人と比較され評価される、苦手意識がある、つまらない授業を受けた、難しすぎるなど、欲求を阻害する要因が多くあります。そのうえ、SNS、ウェブサイト、テレビなど、表面的な欲求を刺激しやすいものが現代の若者を取り囲んでいます。本当の欲求に気づきにくいのは当然と言ってもよい状況にあるわけです。
とりあえず通信指導の話に戻ると、取り組みやすい仕組みを作れれば生徒は学習に向かうものと思っていました。そして、chat授業はまさにその仕組みとして効果的であった訳です。計画を自分の意に反して遂行しないのは簡単ですが、私とのchat授業の約束を反故にするのは難しいですし、自分から質問を送信しようと考えると文章化が大変なことも、私とのやりとりの中であれば未整理なまま気軽に訊けます。
chatというのは話し言葉の要素(会話的な要素)と書き言葉の要素(自立した文章や対話の要素)の双方が色濃く共存できるものですが、学力というのは(少なくとも海外生・帰国生に求められているのは)書き言葉の熟練度に左右されるものなので、不十分な発話の意図を教師が汲み取ってくれる会話的な要素が強い形でchat授業を行うのは、理想的な学習機会とは言えません。しかし、計画的に取り組めないことを避ける機会としては十分ですし、生徒の様子を見ながら書き言葉の要素を強くする場面を作る技術があれば、計画的な学習の代替手段以上の意味があります(逆に、対話的にきちんとした書き言葉でchatをする生徒の場合、うまく言語化できなさそうな疑問点を吐き出してもらうために会話的な要素を強めることで、定期的な答案のやり取り以上の効果を得ることができます)。
chat授業自体は誰でも思いつき簡単に実施できるものですが、それを効果的なものにするのには教師の技量が必要です。私が今chat授業を楽しんで実施しているのには、毎回技術の向上を実感できているからかもしれません。
それでは、スカイプのチャットを用いた通信指導に関してご質問などがありましたら、以下のフォームよりご連絡ください。よろしくお願いいたします。
【お問合せフォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/contact/
スカイプのチャットを用いた授業を始めています ―SOLからのお知らせvol.137―
(2013年6月21日 16:30)