こんにちは。SOLの余語です。
前回は、日本の帰国生入試やAO入試を今年度に受験する予定である場合に、TOEFL iBTのスコアが80点に達していないのであれば、これから高校を卒業するまでの間に英語の学習に注力するべきであるということを述べました。特に、海外での滞在期間が長いケースでは、英語の基礎的な成り立ちに関する理解が不十分であることが多いので、なるべく早い段階でTOEICのPart5や6の問題演習のような取り組みを始めてもらえればと思います。
さて、アメリカの教育制度を採用する高校で学んでいて、上で述べたような学習水準にある人の中には、前回の記事を読んでSATの受験についてはどう考えればいいのかという疑問を抱いた人がいると思います。この点、SATの対策学習をすることによっても英語運用能力が向上するという情報がインターネット上では見られますが、僕はそのような方向性で学習を進めるのは望ましくないと考えています。その理由の一つは、以前にも説明したとおり、SATが受験者の英語運用能力を測ることではなく、大学で学ぶのに十分な学力があるのかということを主な目的とするテストであり、内容が難解で複雑な構造を持つ文章を読むことなどが要求されるということにあります。英語の基本的な原則を学ぼうという時に、そもそも理解するのに時間がかかるような内容を伴う文章を用いることは、人間が物事を学習する過程に関する研究の蓄積を否定するものですし、TOEFL iBTで出てくるような頻出の語彙が定着していないのに、SATで用いられるような目にする機会が少ないものや専門用語を覚えても、TOEFL iBTや帰国生入試などの英語試験を受験のためには意味がないことです。
また、以前にも述べた通り、日本の大学には帰国生入試において出願手続き時に提出する書類に記載された成績が合否に直接的な関連性を持つ大学がありますが、それは東京大学といった難関国立大学や慶應義塾大学などに限定されますし、そこで合格するのに必要な水準は非常に高いものです(欧米の主要な大学に入学するよりも難しいという評価もあるほどです)。英語運用能力が順調に伸びていない状況ではSATで優れたスコアを取得するのは困難なことですし、学習したものを何不自由なく使いこなせるようになるには時間がかかります。首都圏の有名私立大学のほとんどが入試における筆記試験の出来を重視していることを考えると、現時点でTOEFL iBTのスコアが80点を超えていないのであれば、SATを繰り返し受験して上で挙げたような少数派の大学への入学を目指すより英語運用能力を高めるための取り組みに力を入れた方が、受験結果を充実したものにすることにつながるはずです。以上のことから、今回取り上げた学習状況にある人には英語学習に集中してもらえればと思います。
※早稲田大学のように卒業した高校が採用する教育制度において大学入学資格を取得していないと出願資格が認定されないところもありますので、受験校の幅を広げたい人は1度だけSATを受験しておきましょう。
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北半球の高校生の受験準備に関してvol.26 ―帰国生大学入試についてvol.168―
(2013年4月30日 19:10)