こんにちは。SOLの余語です。
前回は、北半球の国々の教育制度の高校で学んでいる人が5・6月に高校を卒業し帰国生入試やAO入試の受験準備に集中して取り組む前に何をしておくべきかということについて総論的に述べたこれまでの記事のリストを掲載しました。今後は学力などの点で代表的なケースをいくつか取り上げて個別的に上の問題を検討していきますが、この記事ではその手始めにアメリカの教育制度を採用する海外の高校を卒業予定で、SATやTOEFL iBTのスコアが高い人を対象にしたいと思います。
ここ数年、アメリカ国内ではSATのスコアに関してアジア系の高校生に高得点者が多いと言われており、日本の大学の入学を目指す人の中にも、SATの以前はReasoning Testと呼ばれていたもので1900点以上を取得し、TOEFL iBTのリーディングとライティングのパートの得点の合計が55点を上回っている人がいます。このような成績を修めている場合でも、書類審査の段階で不合格者が出る国立大学や慶應義塾大学を受験するのであればSATのSubject Testsでできるだけ高いスコアを取得するための学習を高校卒業まで続ける必要がありますし、東京大学を第一志望と考えている人はReasoning Testのスコアに関してもさらに上積みをすることを目指すべきです。
一方で、帰国生入試においてSATのスコアの提出が求められる大学でも、早稲田大学やICU(4月入学者を対象にしたものに限定します)、上智大学といった有名私立大学の文系学部の受験を中心に考えている人にとっては、SAT対策にこれ以上注力することには大きな意味はありません(これらの大学ではReasoning Testのスコアのみを提出すればよいのですから、Subject Tests対策を行なう必要性は全くないと言っても良いでしょう)。そのように考える理由は、これらの大学ではSATのスコアの提出が海外の教育制度における大学入学資格の取得を証明するものに過ぎないと見なされていたり、出願資格を認める条件の中で一定以上のスコアを取得することが求められていたとしても、その水準が上のような成績であれば容易に超えられるものであり、それに加えてSATのスコアの高低が合否に直接的な関連性を有しているとは認められなかったりすることにあります(ICUは受験生の学力を総合的に判断しようとしているようですので、SATのスコアが合否に一定の影響を与える可能性がありますが、それでもReasoning Testのスコアが1900点を上回っている場合には、この点に関して心配は無用です)。
また、これらの大学の帰国生入試やAO入試の中には、TOEFL iBTのスコアが英語試験の代わりに用いられるものがありますし、早稲田大学帰国生入試の英語試験のようにETSがTOEFLの問題を作成する際に準拠する基準に則って出題されていると考えられるものもありますが、上で挙げたような成績がコンスタントに出せるようになっているのであれば、TOEFL iBT対策にこだわることはないと思います。英語の学習ということを考えるのであれば、Oxford University Pressが出版しているvery short introductionシリーズの中から関心のあるトピックのものを選択し、学問的な語彙や高校生活の中でも出会う機会の少ない表現などに対する理解を深める方が有益です。
このように、SATやTOEFL iBTで優秀な成績を修めている人にとって、その対策を継続すべきか否かは、志望順位が高い大学がどのようなところであるかということによって決定されます。次回の記事では、その必要性が低い場合に取り組むべき学習課題などについて検討したいと思います。
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北半球の高校生の受験準備に関してvol.21 ―帰国生大学入試についてvol.163―
(2013年4月11日 19:45)