北半球の高校生の受験準備に関してvol.12 ―帰国生大学入試についてvol.154―

(2013年2月5日 18:15)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、アメリカ以外の英語圏の国の教育制度やIB Diplomaコースで学んでいる場合に、TOEFL iBTのスコアが100点以上になっているなど、順調に英語運用能力を伸びているのであれば、時間に余裕がある時にSAT対策を行なうのではなく、日本語で学問的な内容を扱う本を読むべきであることを述べました。これは、帰国生入試やAO入試の小論文試験に向けた準備ということだけでなく、滞在地の高校での学びをより充実したものにする効果があると僕は考えています。


さて、欧米の教育制度にはボランティア活動やその他の社会的活動での体験を通じた学習を重視するものが多く見られます(例えば、IB DiplomaコースのCASがその一つです)。SOLの教室でも、現地の老人ホームに行ったり学校の教師のアシスタントをしたり、貧困層の人々向けの住宅を建設するプログラムに参加したりする人が多く見られますし、中には高校の周りの自然環境を復元する新たなプロジェクトを立ち上げて資金を集め主体的に運営するという積極的な活動をしてきたケースもあります。日本の教育制度では社会的活動に参加することがあまり奨励されておらず、学校での学習と言うと教室で授業を受けるものが中心になりますので、このようなものの価値を低く見積もる人もいるかもしれませんが、帰国生入試やAO入試を受験する場合には、そうした見方は望ましいものではありません。


日本の大学の帰国生入試やAO入試には、出願手続きにおいて志望理由書の提出を求めるものがあるということは広く知られていることですし、志望理由書を作成するという作業を大学受験の段階以前で体験する機会は多くないため、それに不安を感じる人も少なからずいると思いますので、このブログでも度々志望理由書に関する話題を取り上げてきました。ある学部・学科への入学を希望する理由を言語化するのが難しく感じるのは、そこで学ぶ学問がどのようなものであるかということや社会における有用性に関する理解が高校生の段階では不足している状態にあること(だからこそ、大学に入学にして4年間の学習生活を送ることを考えるのでしょう)が理由であり、当然のことだと思います。


このような問題に直面した人に、ある学問を学ぶことが自分の将来の目標を達成したり、志望理由書を作成する時点で抱いている疑問を解消したりするのにつながるという形で文章を構成するように僕らは指導していますが、ここで大きな役割を担うのが海外に滞在する中で蓄積した様々な社会経験であることが一般的です。例えば、法学部で学びたいと考える理由の一つとして挙げられることが多いものに「弁護士になりたい」という希望があります。そのような将来に対する希望を持つに至った背景を説明する際に、その社会的使命のあり方を中心的な内容にすると、文章が字数指定を満たすことができないもの、もしくは過度に抽象的で読み手に訴えかけるものが少ないものになってしまう可能性があります。この点、これまでに経験したことの中で、弁護士のように法律に関する専門知識が役に立つことが強く実感できるような出来事などがあれば、それを文章の中心に据えることで志望理由書の作成という作業を前に進めることが可能になります。


帰国生入試やAO入試の出願手続きの段階で大学に提出しなければならない書類の中には、早稲田大学政治経済学部のAO入試におけるもののように、高校生活における体験を直接的に問うものもあります。来年度以降に受験を考えている人は今のうちに「話のネタ」になりそうなものをできるだけ多く持てるように心がけてもらえればと思います。


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