こんにちは。SOLの余語です。
前回は、海外の高校生活でよく見られる社会的な活動への参加は自分の学問的な関心や適性を確認することにつながるため、積極的に行なうべきであるということを説明しました。日本の大学では最近、退学者が増加しており、早急に対応が求められる問題と捉えられているようですが、日本の教育制度においても社会的な活動に取り組むことの意義を見直すべきだと思います。
さて、帰国生入試やAO入試において、例年、ICUや上智大学国際教養学部といった入学時に専攻を決めなくてもよいところに加えて、慶應義塾大学SFCの2つの学部や各大学の経営学部のように様々な学問的要素を持つ授業を受講できる学部・学科に出願する人が多くいます。これは、自分の学問的な関心や適性に関して最終的な判断を下すことが難しいと感じる人が少なくないことを示していますが、高校を卒業した段階では、一つ一つの学問では何を学ぶのか、それを学ぶことでどのように将来の展望が開けてくるのかということに関する理解が十分に持てず、また社会で生活していく中で職業的な適性などを確認する機会もないことを考えると、最も理にかなった選択であるようにも思われます。
しかし、上のような大学に入学できる人の数は限られていますし、その他の大学では一般的に出願手続きを取る時点で大学における専攻を決めるよう求められます。また、日本の大学では入学後に所属する学部や学科を変更しようと考えても、1・2年次の成績に関する条件が厳しいといった理由で実際に転部や転科をすることが難しいというケースが見られるだけでなく、そのための試験がないというところもあります。それに加えて、帰国生入試やAO入試の中には、小論文試験などにおいて各学部や学科で研究されている学問領域に関係した文章が出題されるものがあり、一定の専門的知識を身に付けておかなければそもそも問題文の内容を理解できない場合があるのです。
その代表格が上智大学の国際教養学部以外の学部・学科で実施される帰国生入試で、多くの学科で筆記試験が小論文試験や読解力試験のみが筆記試験の科目となっています。そして、そこで学ぶことのできる学問に関連した概念や学術用語、歴史的事実などに関する理解を深めておかないと何を論じているかということすら分からないものを出題する学科があるだけでなく、昭和の初期に書かれた文章を取り上げたり、時事問題に関する知識が直接的な形で問うたりすることも珍しくありません。このような試験で高い評価を得るには、なるべく早い時期(遅くとも受験年度の7月下旬)に受験する学科の方向性を決め、そこでの試験に合わせた対策を進めていくことが必要になります。
このようなことを踏まえると、小論文試験のある帰国生入試やAO入試を受験することを予定している場合、自分の学問的な関心や適性を確認することは難しいことではあるものの、避けては通れないステップだと考えるべきです。少なくとも、前回の記事で述べたように、受験準備を行う環境で進路指導を受ける際に、担当する教師などがそれらの点について助言できるような材料を高校生活の中で揃えるようにしてください。
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北半球の高校生の受験準備に関してvol.17 ―帰国生大学入試についてvol.159―
(2013年2月26日 18:50)