こんにちは。SOLの余語です。
「帰国生大学入試について」では、これまでの3回の記事において、海外の高校生活で見られることの多い社会的な活動に参加することの意義を説明しました。それは、帰国生入試やAO入試の受験準備に直接的な影響を持つだけでなく、学問的な事柄を理解する上で必要となるものを与えてくれるという点で重要なものです。このような機会がある場合には積極的に取り組んでもらえればと思います。
と言っても、治安上の問題などが原因で、滞在している土地の社会と関わりを持つことが難しいケースがあることもこれまで指導してきた生徒から聞いています。例えば、東南アジアの治安が良いとは言えない国で生活している人の中には、高度な警備システムで保護された住宅が集合した地域に住み、どこに行くにも運転手付きの車で送り迎えしてもらう人もいるそうで、通っている高校も国際校であるために、人間関係も自分と同じ様な境遇にある人や、現地出身の人であっても経済的に恵まれた人との間のものに限定されてしまうようです。このように地域社会と接することのできる範囲に限界があると、一般的な日本人が期待する「現地に住んだ経験のある人ならではの情報」を提供できないということになる可能性がありますし、実際にフィリピンや中国、南米の国々などから帰国した生徒にはこのような傾向が見られます。
前々回の記事で紹介した上智大学経済学部経営学科の帰国生入試は極端な例ですが、帰国生入試やAO入試の面接試験での質問にうまく対応するには、合否に直接的な関連性がない場合がほとんどであるものの、自分の滞在した社会の政治的・経済的・文化的な特徴や、そこに住む人々が持つ様々なものに対する価値観などについて理解を深めておくことが求められます。また、このような理解や知識が志望理由書や小論文を書く際にも文章中で自分の考えをサポートする具体例として使えるということを踏まえると、それを自分のものにすることが困難である環境にいる人は、自分なりに戦略を立ててこの課題に取り組むべきということになるのだと思います。
この点、自分の住んでいる土地の政治や経済、文化などの紹介や分析を行なう書籍やインターネットの記事を読むことを勧めています。社会を観察する機会に恵まれない状況では、何らかの形で視点を定めてそれを行なわなければ、中身のある結論に到達するのは困難なことである一方で、どこに目をつけるのが適当かということについては、実際にその社会を観察した経験が豊富になければ正しく判断できません。これを考えると、その社会に関する本を読んで、これまでに形作られた「ものの見方」を自分のものにし、その上でできる限りの観察を行なうのが望ましいということになります(読書によって他人の考えに過度な影響を受けてしまうことのではないかと心配する人がいますが、18歳ぐらいの人の脳は柔軟で常に「ものの見方」は更新されるものですので安心してください)。日本語で書かれた新書でもよいですし、欧米の出版社が発行する観光ガイド(村上春樹氏によると、日本で出版されているものと異なり、政治や経済、文化に関する読み応えのある考察などが掲載されているそうです)でも構いませんので、自分の滞在している社会について書かれた本を読むようにしてください。
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北半球の高校生の受験準備に関してvol.15 ―帰国生大学入試についてvol.157―
(2013年2月18日 20:30)