北半球の高校生の受験準備に関してvol.10 ―帰国生大学入試についてvol.152―

(2013年1月31日 16:05)

こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、インターネットで見かけることのある「SAT対策は英語運用能力の伸長に有効であるから、どのような教育制度で学んでいても行なう必要性がある」という情報について検討し、TOEFL iBTのスコアが80台前半で伸び悩んでいる場合には、TOEFL iBT対策や英語の基礎的な成り立ちの理解に関する学習を優先して行なうべきということを説明しました。この点でも、SATの受験についての判断は現在の学力を踏まえて行うべきということになるのだと思います。


さて、その中で、SAT対策は海外生活の中で順調に高い英語運用能力を身に付けた(=TOEFL iBTのスコアが高い)人が更に高い水準で英語を読み書きできるようになりたいと考える場合には意味があるということも述べました。この箇所を読んで、アメリカのものではない教育制度の下で学んでいる場合でも、このような条件にあてはまるのであればSATを受験することが有用であるという印象を受けた人もいるかもしれません。そのような理解は誤ったものではないのは事実ですが、アメリカ以外の英語圏の国の教育制度やIB  Diplomaコースのカリキュラムを採用している高校で学んでいる人には英語運用能力の向上が目的であってもSAT受験の必要性はないと僕は考えます。


それは、これらの教育制度のいずれにおいても、大学入学資格の取得を目指すのであれば、英語圏でもよく使われるものと見なされていない学術的な単語が用いられた、複雑な構造と難解な内容を伴う英文にふれることを求められるからです。IB Diplomaコースを含む英語で授業や試験が実施される教育制度では、大学入学を得るための要件として、経済学や法学、心理学のように、日本の教育制度で言えば大学に入学してから学ぶことになる学問の入門的な授業を履修し、そこで一定以上の成績を修めることが必要になります。そして、そこで与えられる教材は各学問の専門的な内容のものであることが少なくありませんし、抽象的な論件についての考察が授業での課題となっているケースも見受けられます。


このような教育制度を採用する高校において、より良い成績を取ることを目標に与えられる学習課題に専念することによって得られるものは、言語学習において基礎的な次元の後に続くものが一つ一つの学問分野に特殊なものであることを考えると、SAT対策を行なうことに比較して英語運用能力の向上という点では大きな違いは存在しません。それに加えて、自分の学問的適性を確認する機会を得られることや、大学での学びを充実したものにするために必要な専門的知識を蓄積したり論述力を養ったりできることを考えると、IB Diplomaコースなどで学んでいる人には、英語をより自在に使いこなせるようになることを目指している場合であっても、SAT対策に時間を割くことなく、自分の通っている高校での学習にできる限り注力してもらえればと思います。


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