北半球の高校生の受験準備に関してvol.6 ―帰国生大学入試についてvol.148―

(2013年1月21日 17:20)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、アメリカの教育制度を採用する高校に通う人や、その他の教育制度で大学入学資格を取ることができない人が日本の大学の帰国生入試やAO入試を受験する場合に、SATのSubject Testsを受けておくことの必要性はあるのかということを論じました。それは入学を希望する大学や現在の学力などによって個別的に判断すべき問題ですが、上のようなケースにおけるSATの受験に関しては他にも考えるべきことがあり、今回の記事ではその一つを取り上げたいと思います。


僕らが個別面談などの機会に耳にする話として、「日本の大学の帰国生入試ではSATの結果が合否の判定に大きな影響力を持っている」というものがあります。このような情報の出所を確認すると、滞在している土地で開催された大学の入試担当者以外の第三者が行う説明会であることが多いようです。これは現状を限定的な形で正確に捉えた話ではあるものの、帰国生入試やAO入試全般に妥当するものではありません。それにもかかわらず、僕らの面談の相手の人から説明会の場において、どのような教育制度で学んでいる人に対しても適用されるものであるというように話がなされたという説明を受けることがあり、その度に僕らはどのような真意を持ってそのようなことがなされているのか疑問を感じています(もちろん説明会に参加した側が誤った理解をしている可能性もありますが)。


「帰国生大学入試について」のvol. 141でも述べた通り、日本以外の先進国の教育制度では高校卒業資格と大学入学資格は別のものと考えられており、大学入学資格取得のための統一試験などの制度が整備されているのが一般的ですし、また自分の母国の外で学ぶ人のためにIB Diplomaという国際的な制度も設けられています。これらの制度の中には最終試験などに合格すれば大学入学資格を付与するというものもありますが、多くの場合、SATと同様に大学入学資格取得のための試験などにおける受験者の成績がスコア化されるものがほとんどです。また、そのスコアの解釈の仕方も公式HPで公示されており、海外の大学では入学希望者が学んできた教育制度に関係なく入学の認定を行うところも見られます。このようなことを考えると、日本の大学がSATにのみ特権的な地位を与えていると考えるのは不合理なことのはずです。


また、日本の大学の中には4月入学者を対象とした帰国生入試やAO入試において大学入学資格取得のための統一試験などの成績を重視するところがあるのは確かですが、それは書類審査の段階で不合格者が出る国立大学や慶應義塾大学、上智大学国際教養学部に限られ、その他の大学では実際の入試会場で行われる筆記試験や面接試験(場合によっては、これに加えてTOEFL iBT、TOEICのスコア)で合否が決定するところが圧倒的な多数を占めます。これも以前に述べたことの繰り返しになるかもしれませんが、現在、大学入学資格の取得を出願条件の一つにしている大学でも、出願手続き期間までにその証明書や最終的な成績を送ることのできないオーストラリアやニュージーランド、南アフリカといった南半球の高校に通う人に出願資格を認めるところがほとんどですし(例えば、早稲田大学やICU、明治大学政治経済学部、文学部がこれに当たります)、このようなケースに不合格者が偏在するという現象もこれまで指導してきた生徒の間では見られません。


以上のような傾向を踏まえると、先に挙げたいくつかの大学を除いて、大学入学資格取得のための統一試験などの結果が合否に直接的な関連性を持っていると現状を評価するのには無理があるのではないかと考えます。アメリカ以外の国の教育制度の高校に通う人には説得力に欠ける言説に惑わされず、自分の状況に合った形で受験準備を進めてもらえればと思います。


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