帰国生大学受験セミナー通信vol.12 ―SOL帰国生大学受験セミナーについてvol.35―

(2012年8月31日 21:10)

こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、帰国生入試やAO入試で提出の求められることの多い志望理由書を、SOLの生徒がどのような流れで作成しているか、また教師がどのような形でそれをサポートしているかということを説明しました。志望理由書の作成に時間や手間をかけるのには、その内容や面接試験の結果を重視する大学があるということが理由の一つですが、このような大学は決して多くはありません。しかし、そうであったとしても、前回述べた手順を踏んで志望理由書を作成することには意味があると、僕らは考えています。


例えば、今年の生徒に慶應義塾大学法学部のFIT入試に出願した人がいます。彼が海外で通っていた高校には難民の家庭で育った人が多くいて、そこで内戦や人種差別といった困難な問題に直面した状況での生活についての話を聞く機会があったようですが、それに加えて、受験準備をしている中で最上敏樹氏の「人道的介入」を読み、そのようなケースが世界で広く見られることを知り、移民や難民の人権保障のあり方を学びたいと、8月の始めに法律学科向けの志望理由書の作成を始めました。


1週間後に彼が書いた文章を添削することになりましたが、そこには、日本政府は難民の受け入れに消極的な姿勢を示しており、その背景には移民などに対する国民の強い抵抗感があることや、そのような人々の受け入れを拒否することは人道に反する可能性があるということが書かれていました。そして、大学での学習目標として挙げられていたのは、様々な観点から難民や移民を受け入れることのメリット・デメリットを検討し、難民を積極的に受け入れることに対する国民的支持を得るための方策を模索したり、難民の生活保護に関する制度の在り方について考察したりしたいということでした。


この志望理由書を読んで、僕は彼に法律学科は伝統的に憲法や法律の解釈について学ぶところであり、制度の立案や社会問題の総合的な考察は政治学科の取り扱う領分であるということを伝え、文章の内容を法律学科で学べる事柄に関連するよう考え直すか、出願する学科を政治学科に変更するか、どちらかの対応を採るべきという話をしました。その結果、彼は政治学科に出願することを決めたのですが、このような自分の志望学部・学科と学びたいことのミスマッチは、大学の各学部で研究されている学問についての理解がそれほどない18、19歳の人にはよく見られるものです。


また、高校3年生ぐらいの人の上で述べた傾向を考えると、志望理由書を作成する段階で、教師が生徒をサポートする時間を十分に確保しておくことは、彼らが本当に学びたい事柄が大学で取り扱われているのかということを確認できるという点でも有益だと思います。このようなことを考えると、志望理由書の作成(教師の視点から言えば、そのサポート)に時間や手間を費やすことには、生徒の大学入学後の生活を充実したものにするという意義があるということになるでしょう。


それでは、今回の内容に関して、ご質問などがありましたら、以下のフォームよりご連絡ください。


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