帰国生大学受験セミナー通信vol.5 ―SOL帰国生大学受験セミナーについてvol.28―

(2012年7月30日 18:15)

こんにちは。SOLの余語です。
今週で帰国生大学受験セミナーの集団授業が始まってから6週間目に入りましたが、受講生全員が共通した小論文課題に取り組む授業では、ここまで9個の課題を出題してきました。そのうち、7月9日から20日までに取り扱った4課題の問題文の内容は以下の通りです(最初の3課題については先日掲載した記事をご参照ください)。


・日本人は伝統的に、十分な恩恵を与える一方で、災害などの形で人間の生活を破壊することもある自然環境の中で生活を営んできたことで、自然環境に順応するということを基本的な姿勢としてきたが、自然環境を克服することを目的とする西洋科学が導入されてからは、災害の被害を軽減し回避する努力を怠るようになってしまった。このような日本人の精神性の変化を問題視するもの


・メディアの価値は、その情報にアクセスすることによって視聴者や読者の世界の成り立ちに対する理解が深まるかどうかで決定されるが、最近では新聞やテレビといったマスメディアで、彼らが知っているはずの事柄が明るみになった時に、知らないふりをしてイノセントに驚愕してみせることが多くなったことから、マスメディアがその権威性を失い将来的に凋落することを予測するもの


・これまで、都市には、権力が円滑に機能しなくなった場合を除いて、食糧が安定的に供給されてきたが、それは農民が生産する食糧から彼らが自分で消費する分を引いて余ったものではなく、農民が飢餓状態に陥るとしても、都市が存続するのに必要な食料が確保されてきたということを述べるもの(これには、そこまでして都市を維持する意義とは何かということに関する自分の考えを述べるという小論文課題を付けました)


・金銭の価値は日々変動するもので、太平洋戦争後の混乱期の日本で見られたように、いくら多くの金銭を持っていても食糧などの生活必要物資が手に入らないことがある。このため、金銭を使って生活に必要なものを確保している都市の住民は精神的な安定を得ることが難しいので、1年のうちの何ヶ月かを食糧などの本来的な意味での供給源である自然環境に囲まれた田舎に行き、農作業を行うことを彼らに義務付けるべきであるという主張をするもの



この時期に生徒共通の課題としているものは、金銭やメディア、都市といった現代世界で暮らす人々にとって、その存在が当たり前になっているものの存在意義などを、生徒に考えさせるものです。この背景には、小論文を書く場合には、そこで自分がこれまで当然のことだと考えてきたことや、一般的に常識であるとされていることを文章化するのだとしても、その主張に見合った論拠を付けることが求められるということがあります。よい小論文を書くために必要な能力の習得を学習目標に設定するのであれば、授業で教材として扱う文章は、それを読むことを通じて、何事についても「当然のことだ」という形で切り捨ててしまう姿勢を放棄しなければならないということに生徒が気付くことのできるものでなければならないと僕らは考えていますし、実際にこれまでに指導してきた人を含めた多くの生徒にとって、僕らが選んだ文章の内容は印象深いであるようで、何年経ってもそれを覚えているという人もいます。


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