こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、帰国生入試やAO入試の面接試験において、緊張感や不安を克服し自分の考えを明確かつ正しい形で相手に伝えられるようになるためには、実際の試験に似た雰囲気の中で練習を積むことが必要であるということを説明しました。このようなことを考えると、受験に向けた準備をする環境を選ぶ際にはそこで学ぶ人が試行錯誤する機会を十分に確保できるものであるかを確認する必要があります。
ところで、帰国生入試やAO入試を受験する人の進路指導で小論文の教師が大きな役割を果たすべきであることを「帰国生大学入試について」のvol. 88で述べましたが、面接試験に向けた準備においても同様です。日本の大学入試には、合否の判定をする際に筆記試験の結果が重視され、面接試験の出来が与える影響はそれほど大きなものではないという一般的な傾向があります。しかし、多くの帰国生が受験する入試の形態は多様で、慶應義塾大学の帰国生入試のように書類審査と面接試験のみで合格者を決定するというものでは、受験生の学問的な適性や能力を把握するために面接試験が利用されているはずです。また、小論文試験などの筆記試験がある場合でも、埼玉大学の教養学部や経済学部、もしくは横浜市立大学国際教養学部のように面接試験に比較的高い点が配分されているところもありますし、これまで指導してきた生徒の受験結果や面接試験で問われたことを考えると、上智大学の各学科の帰国生入試などでも試験官の質問に対して受験生が答えた内容が合否判定の際に重視されていると推測できます。
これに加えて、大学の教員と話す機会がある時に、帰国生入試やAO入試における面接試験の位置付けについて尋ねてみると、教員と受験生が直接対話する形式の試験を個人的に重要視する人が少なからずいるものです。事前に一定程度の準備ができ、実際の試験でも1~2時間という時間が受験生に与えられる小論文試験よりも、質問された事柄に関してその場で考えたことを表現しなければならない面接試験の方が、知性や自分で物事を考える姿勢を試すのに適していると考えていることがその理由のようですが、このような人は面接試験に積極的な形で参加してくる可能性が高いと思われます。それに対応するには自分の受験する学部学科で扱われる学問に関する理解を深める他に、志望理由について自分が提出した書類に書いた内容以上に細かに思慮していることを示せるようになったり、関連するトピックに関する問答を行うことに慣れたりするといった方向性で準備を進めることが必要になるでしょう。
この点、小論文の授業を担当する教師は文章の内容をどのように深めていくかということを日頃から指導していますし、また授業で出題する問題を作成したり答案を添削したりするのに大学の各学部・学科で研究されている学問についてある程度の理解が必要なはずです。このようなことを考えると、面接試験に向けた準備において小論文の教師が大きな役割を果たすことが望ましいということになりますが、以前の記事でも述べたように、現在の日本では多くの受講生を抱える教育機関には十分な数の小論文の教師を確保することが難しく、授業の内容に関する質問にも対応してもらえないところがあるということをよく耳にします。そういう環境では、上で述べたような形で面接試験の準備を進めていくことについて小論文の教師からサポートを受けることも想像しづらいことですので、やはり生徒の人数に見合った数の教師がいるかということを確認した上で、受験準備を行う場を選択すべきということになるのだと思います。
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帰国生入試の受験準備を行うのに最適な環境とは?vol.21 ―帰国生大学入試についてvol.90―
(2012年6月13日 19:35)