帰国生入試の受験準備を行うのに最適な環境とは?vol.17 ―帰国生大学入試についてvol.86―

(2012年5月25日 19:15)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、小論文の学習において受験生が直面する課題は多様であり、またそのような状況が生じた原因も人によって様々であるため、帰国生入試やAO入試の受験準備を行う場として「人数の多い環境」は適切なものではないということを述べました。ここまで、どのような環境で帰国生入試などの準備をすべきなのかということを16回に渡って考察する中で、多くの大学の一般入試には存在しない小論文試験で何が求められているのかということに注目してきましたが、英語試験対策について考えても、「人数の多い環境」は帰国生の能力を最大限伸ばすことのできるものであるとは言えないと思います。


英語圏の国の現地校やその教育制度を採用する国際校に通った経験を持つ帰国生は、英語を使って日常的なコミュニケーションを取ることに大きな問題を感じないのが一般的です。しかし、年齢相応な学問的文章や新聞記事などを読んだり、様々な表現や単語を正しく使いながら文章を書いたりする英語運用能力の書き言葉的な側面に関しては、人によって大きな差が見られます。これは、多くの人が英語の習熟度と最も関係があると考えるであろう、海外での滞在期間(正確には、英語圏の教育制度の中で学んだ期間)の長さだけでなく、通っていた学校の状況を含めた意味での学習環境のあり方や、精神的な成長のどの段階で海外に渡航したのかということ、多くの帰国生にとっての母語である日本語に対する理解度、個人の有する言語に関わる才能などといった、多くの要因によって左右されるものです。


例えば、海外での滞在期間が長い人でも、日本語の文がどのような構造で成り立っているかということを考える機会がなかったために、英語で難解な文章を読解する際に、どの語が主語や述語といった役割を果たしているかといったような形で文構造を検討できないというケースがあります。このような人は、自分の知っている語や表現を拾い読みし、そこから得た情報を元に自分の頭の中で文の内容を再現しようとした結果、誤った理解に辿り着いてしまうことが多くなってしまいます。また、自分の年齢に合った社会問題や学問的事項に関する話にふれることのない環境で過ごしてしまったがために、これらのトピックに関連する単語や表現の知識を十分に持っておらず、新たな語彙・概念の習得に消極的であるという問題(例えば、辞書を活用することの必要性について自覚的でない)に直面している人も珍しくありません。


このような英語運用能力を向上させるのに大きな障害となり得る問題はない場合でも、周りの人の文法事項や表現・単語の用法などに関する理解が誤っていた(それが英語圏のネイティブであった場合には、「誤っていた」という表現よりは、「辞書などで説明されているものとズレていた」と言う方が正確かもしれません)ため、自分も文章を書く時などに同じ間違いをしてしまうのは帰国生一般によく見られる現象ですが、例えばhoweverをbutと同じ形式で用いてしまうといったもののように多くの人に共通するものもあれば、そうでないものもあります。英語という外国語による文字情報に多くふれなければならない環境の中で十分に努力したものの、have doneやhad doneの使い方の違いやどのような場面で動詞にsを付けるのかというような文法事項にまでは正確な理解が及ばなかったという問題も、帰国生の間で広く見られるが、その具体的な形は人によって異なるという点で、上で述べた問題に共通するものです。


英語学習において帰国生や海外生が直面する問題には、知識の整理や矯正を求めるものから、学習者の意識の変化を必要とするものまで多岐に渡り、具体的に何が学習者の運用能力の発達を阻害しているのかについても多様な形があり得ます。このような状況では、問題解決に向けてできる限り個別的なアプローチが必要なはずですが、「人数の多い環境」ではその条件を満たすのが難しいはずです。この点でも、帰国生入試を受験する人は、受講者数の多さを理由に受験準備を行う場を選択すべきではないと僕は考えています。


それでは、今回の内容に関して、ご質問などがありましたら、以下のフォームよりご連絡ください。


【お問い合わせフォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/contact/



トップへ戻る