こんにちは。SOLの余語です。
「帰国生大学入試について」のvol. 80では、小論文試験で高い評価を受ける、十分に深まった考察を備えた文章とはどのようなものなのかということを、入試で出題される可能性のあるトピックを用いながら説明しました。それでは、実際にあのような形で考察を深められるようになるには、受験準備を行う中で何をすればよいのでしょうか。今回の記事では、その点について検討してみたいと思います。
前回の記事を読んだ人の中には、文章の内容を練れたものにすることはそれほど難しいことではないと感じた人がいるはずですが、塾や予備校の授業などで小論文の書き方を指導されても、小論文を書き始めた段階でこの点について困難を感じる受験生は多くいますし、受験生活の終盤になっても問題を克服できない人もいます。物事の中には、言語情報として接した時に習得することが容易に思えても、実際に行動に移してみることが難しいものがあるのです。
これは、例えば、初めて自転車に乗ったり、自動車を運転したりした時のことを考えてもらえば、理解できることだと思います。これらの乗り物に関しては、一つ一つの部品に名前が付いていますし、それらがどのような役割を果たすのかということについて書かれた本があったり、言語を使ってレクチャーしてくれる人などがいたりするはずです。それでも、多くの人はどのような場面でどれくらいの力を入れればいいのかということなどが分からずに、練習を始めた当初は失敗を繰り返し(日本の自動車の運転教習では、助手席にブレーキが付いたものを使用しますが、それは受講生が何らかのトラブルを引き起こす事態に備えたものです)、その後、実際に運転などに取り組んだ経験を蓄積する中で、目標としていた行動をスムーズに行えるようになったという人が多いと思います。
小論文の中で提示する考察を深められるようになる過程もこれに重なる点が多々あるものです。自転車に乗ることなどに関わる経験は身体をどのように動かすかということについてのものであり、文章を書くといった思考活動とは関連性がなさそうに見えますが、言語学習の現場などでは人間が物事を習得することの持つ、上で述べたような側面に注目した取り組みが考えられています。また、そもそも身体的な活動や思考活動において脳が主要な役割を果たしているのですから、2つの学習過程において共通点があることは不思議なことではありません。
このようなことを考えると、小論文試験に向けた学習においては、受験生が試行錯誤を繰り返す余地があること、そして失敗を繰り返す中で教師などから修正すべきポイントを細かく指導してもらう機会があることが重要になってきます。それは、具体的には、授業などで与えられる小論文の課題一つ一つに関して、提出した答案に付けられた評価やコメントの内容を踏まえて書き直したものを何度でも添削してもらえるような環境が必要であることを意味しますし、生徒が自分の書こうとしている事柄や主張の方向性に関しての確認や質問するのに対応する時間的な余裕などが教師の側にあることが、受験生が学習を進めていく中で不可欠な条件であるということにもなるはずです。
それでは、「人数の多い環境」は小論文学習を行う場に求められる上記の条件を満たせるものでしょうか。次回はこの点について検討したいと思います。なお、今回の内容に関して、ご質問などがありましたら、以下のフォームよりご連絡ください。
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帰国生入試の受験準備を行うのに最適な環境とは?vol.12 ―帰国生大学入試についてvol.81―
(2012年4月27日 19:10)