こんにちは。SOLの余語です。
前回は、司法試験対策の専門学校の論文対策授業で広く見られるものとして、「マニュアル型」の指導があることを述べました。これは、ある問題について論文を書く時に、どのような視点で書くのか、どのような話の流れを作り出すのかということに関する細かい指示のついたマニュアルを学生に記憶することを求めるものでしたが、このような指導は、帰国生大学入試やAO入試対策指導の現場でも行われているのではないかと、僕は考えています。
帰国生入試やAO入試の受験が多く行われる9月から11月は、週末になると実際に試験を受けた生徒が教室に来て、その日にあった出来事や受験会場の様子などを僕らに話してくれます。その中で最も多いのが、他の受験生が試験前にどのようなことをしていたのかという話なのですが、小論文試験の前になると、予備校のテキストや授業で取ったノートを見て、どのようなトピックが出題されそうなのか、それに対してどのように論じるべきなのかといったことを確認する人が多いようです。
例えば、一昨年、一橋大学の外国学校出身者入試を受験したTさんによれば、他の予備校に通っていた人が、予備校で出題されると言われた地球温暖化問題について(一橋大学の過去問を見れば予測がつくことですが、実際にこのようなトピックが出題されることはありませんでした)、テキストを確認していたそうです。そして、そこに書かれていた内容を記憶しようとそらんじていた人がいたらしいのですが、その内容は前回紹介したマニュアルのように、地球温暖化というトピックについてどのような結論を、どのような流れで導き出すかというものだったということでした。
また、書店に小論文のテキストを買いに行くと、数多くの著作を出版している予備校の講師がいますが、彼が個人で経営している塾のホームページでは教材のサンプルを公開しています。そこには、その塾での指導が他の予備校と違い、出題されたトピックに対してどのようにアプローチをすればよいかを具体的に指導していることが述べられていますが、それと同時に「正攻法」という言葉が頻繁に出てきて、それがある一定の観点や論じ方と結び付けられています。
その上で、「正攻法」とされた論じ方では、どのような話をどのように展開していくのかということが詳しく説明されているのですが、これが、授業を受ける生徒の視点から、あるトピックに関する小論文を書くためのマニュアルのように捉えられても、何も不思議はありません。このような説明のしかたは、模試の解説やその他の市販されているテキストでもよく見られますが、これも「マニュアル型」の指導と言えるでしょう。
このような、小論文試験対策の中で論じ方に関するマニュアルのような教材を用いた指導が行われていることをうかがわせる事情は、この他にもあります。次回は、予備校で行われる小論文対策の授業の一般的規模や、小論文の添削にはどれぐらいの労力や時間がかかるのかという観点から、この問題について考えてみたいと思います。
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「マニュアル型」の小論文指導についてvol.2 ―帰国生大学入試についてvol.20―
(2011年3月10日 15:52)