こんにちは。SOLの余語です。
前回は、小論文を書く時に「起承転結」という型を用いた場合の、話の流れのパターンの1つについて説明しました。それは、問題提起を行った後に、それに関する状況説明をし、それから自分の立場についての説明をするというものでしたが、今回はもう1つのパターン、それも最近よく売れていると評判な小論文のテキストの中でよく見られるパターンについて説明したいと思います。
今回の記事でも前回と同様に、「脳死と判定を受けた人の臓器を移植することは許されるのか」というテーマを用いますが、「起承転結」を小論文で用いた場合のもう1つのパターンとは以下のようなものです。
【パターンB】
〈問題提起と問題についての簡潔な説明〉
この小論文では、「脳死問題」について取り扱うことを述べる。また、パターンAでは「承」の部分で行ったような、「脳死問題」に関する法律の対応やその変遷、社会における反応などをここで簡単に説明する。
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〈自分の立場とは反対のものに関する説明〉
「脳死問題」に関する自分の立場とは反対のものがあることを述べる。その上で、そのような立場が存在する背景にあるものについて説明する。例えば、自分が「脳死と判定された人の臓器移植」に関して反対の立場を採るのであれば、賛成する人がいることを述べ、iPS細胞(どのような臓器にもなりうる万能細胞)を操作する技術が発展するなど、臓器を人間の手で生成できるようになるまでは、臓器移植にしか治療の可能性がない病気が多くあることや、宗教が社会的な倫理として機能している欧米各国でも臓器移植が広く受け入れられていることなどを紹介する。
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〈自分の立場の説明〉
ここでは、パターンAと同様に、自分の立場を表明した上で、その論拠について説明する。上のように、臓器移植に反対する場合には、それを明らかにした後に、「脳死=人の死」という図式には論理的に無理があること(例えば、脳死と判定された人は脳幹の機能が停止しており、自律的に呼吸ができないため、死者として扱っても問題がないとされるが、医療機器の手助けを得て呼吸をしているのに、生きている人間と扱われる人が多くいることなど)、児童虐待の発覚を免れる道としてこの制度が利用される可能性があることなどを述べる。
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〈結論〉
ここも、パターンAと同様に、自分がどのような立場を採ったかの確認をする。もしくは、自分の主張に合った、今後に向けての簡単な提言を行う。
前回紹介したパターンAでは、「承」として状況説明をしましたが、パターンBではそれを問題提起の一部とし、代わりに小論文で読み手に提示したいと考えている自分の立場と反対のものに関する説明を「前ふり」として用いてあります。
昨年の夏にSOLの帰国生大学受験セミナーの授業を受けていたS君は、海外に滞在していた期間から小論文のテキストを多く集めて、自分なりに勉強していたようです。教室に通っていた期間に彼のコレクションの一部を見せてもらう機会がありましたが、その中でも受験業界で高い評価を受けているとされるテキストでは、文章の始めの方で自分のものとは反対の考えを紹介し、「確かにそれに見合う事情はあるが、しかし・・・」という形で自分の考えを持ち出すという、パターンBの流れに沿った文章を書くことが奨励されていました。
しかし、「帰国生大学入試についてvol.13」でも述べた通り、「起承転結」という流れに沿って小論文を書くことは好ましいことだと、僕は思いません。次回の記事では、これまでに紹介した2つのパターンのどこに問題があるのかについて説明したいと思います。
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実情に合わない小論文指導についてvol.3 ―帰国生大学入試についてvol.15―
(2011年1月25日 14:45)