実情に合わない小論文指導についてvol.2 ―帰国生大学入試についてvol.14―

(2011年1月24日 15:45)


こんにちは。SOLの余語です。
前回は、物語文や経験文といったカテゴリーに入る文章で望ましい構成とされる「起承転結」が小論文指導でも用いられることがあることを述べました。今回は、「脳死と判定を受けた人の臓器を移植することは許されるのか」というテーマを具体例として、「起承転結」を小論文に当てはめると、どのような形で文章を構成することになるのかということを見たいと思います。

今回取り上げる「脳死問題」は、「脳死=人の死」を原則とする臓器移植法の改正で大きな注目を集めることになったもので、帰国生入試でもICUや青山学院大学法学部の小論文試験で実際に出題されました。哲学や法学、生物学、医学など、様々な学問に関係する問題ですし、人間存在の理解の仕方に関る重要なテーマでもありますので、SOLの授業でも度々取り上げていますが、このテーマに関する小論文を書く時に「起承転結」という型を用いる場合、まず以下のような話の展開が考えられます。

【パターンA】
〈問題提起〉
この小論文では、「脳死問題」について取り扱うことを述べる。
  ↓
〈問題についての詳細な説明〉
臓器移植法の制定過程や今回の改正の詳しい内容、その背景にあった社会問題などについて説明する。または、上で述べたような改正に関して、人々がどのような反応を示したかということについて述べる(筆者が何らかの主張をしている問題文がついているものであれば、それを要約するのもいいでしょう)。
  ↓
〈問題に対する自分の立場の説明〉
臓器移植を認める、もしくは認めない(それぞれ条件付きでも問題ありません)といった自分の立場を表明する。認める場合には、臓器移植によって今まで多くの人の命が助かっていること、これまで臓器移植が認められなかった子供の患者が海外で臓器移植を受けていることが国際問題になっていることをその論拠として挙げる。また、認めない場合には、生物学的に見て「死」を定義することが困難であることや、脳死と判定された人でも医療機器を使用することで延命が可能である場合が多いこと、児童虐待を引き起こす可能性があることなどを論拠として示す。
  ↓
〈結論〉
自分がどのような立場を採ったかの確認をする。もしくは、自分の主張に合った、今後に向けての簡単な提言を行う。

「起承転結」という型では、「承」から「転」に移る、文章の中間地点で話の流れを転換することが求められていますので、「脳死問題」に対する自分の立場を説明する前に、何か「前ふり」になるものが必要になります。この点、パターンAでは、「脳死問題」に関する、これまでの法律の対応や変遷などを説明するという形で、「承」のパートに必要とされるものと満たしたわけです。

これが、「承」から「転」に移る際によく見られる話の展開の一つですが、他にも小論文に関するテキストでよく見られる型があります。次回の記事では、それがどのようなものかを説明します。

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