こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、オーストラリアやニュージーランドの高校に単身で留学した人は日本の大学の帰国生入試のための準備を、最終学年が始まる前の12月や1月から始めるべきだということを述べました。僕らがこのように考える理由は、北半球の国々の教育制度を採用する人と同じぐらいの学習期間を確保するには、前回の記事で述べたようなスケジュールで学習を進めるしかないということでしたが、帰国生入試が始める約9ヶ月前から受験準備を開始することには他にも利点があります。
その一つが、受験準備をする中で方向性の異なる(正確に言えば、難易度の大きく異なる)様々なものに手を出すという無駄が省けることです。例えば、日本の大学の帰国生入試では出願資格を得るための条件として、滞在している国や州の大学入学資格を持っていることを求めているところがあります。この条件を満たすためには、アメリカの教育制度を採用している高校を卒業する人はSATを受験しなければなりませんし、IBプログラムがある高校の出身者はIB Diplomaを取得しなければなりません(ただし、IB Certificateしか取れなかった場合でも、SATを受験していれば受験資格が認められます)。
この点、オーストラリアの各州には大学入学資格試験がありますし(例えば、Queensland州であればQCSがそれに当たります)、ニュージーランドであればNCEA Level3資格を取得するための試験がありますが、これらの試験の結果は12月頃に出るので、多くの私立大学の出願手続きが行われる時期(7月から9月)には提出することができません。このため、南半球の高校に通っている人は上で挙げた大学入学資格取得試験の代わりにSATを受験した方がいいとする情報をインターネットなどで見ることができます(今年、SOLに通った生徒の中にも、受験をする前の年の夏に大手の予備校でSATの受験をするように言われた人がいます)。
しかし、実際には、滞在している地域の大学入学資格取得試験を受験できる見込みであるとの証明書が高校から発行される状況にあり、慶應義塾大学の帰国生入試や上智大学国際教養学部のAO入試を受験するのでなければ、SATを受験する必要はありません。例えば、早稲田大学の各学部や明治大学の政治経済学部や文学部の帰国生入試の出願要項をよく読むと、南半球の高校に通う人は、出願手続き期間に大学入学資格試験を受験できなかった理由を所定のフォームに書き込んで提出できれば、受験資格が認められることが分かります。
実際にSATを受験した経験のある人ならば分かると思いますが、SATのCritical ReadingやWritingの試験で出題される問題はTOEICやTOEFLよりも難しいものです。特に、滞在期間が短く、高校の授業についていくのが難しく感じる状態では、SAT対策は内容が難しすぎるために英語運用能力の向上につながりません。帰国生入試の英語試験に対応するための実力を身に付けるためには、より基礎的な語彙や文法事項の知識を必要とするTOEICやTOEFLの受験準備にできる限りの力を注ぐべきです。
このように、自分の現在の学力に合わない形で受験準備を進めることを避けるためには、早い時期に正確な受験情報を入手することが必要になります。そして、最終学年には入る前の長期休暇から学習機会を持つ中で、入試の行われる9ヶ月前に帰国生入試や大学についての情報に接することができるでしょう。
なお、受験準備として無駄なことを行わないという意味では、TOEICやTOEFLをどのように受験していくかということにも問題があります。次回は、それについて説明したいと思います。
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南半球の高校に単身留学している人の大学受験についてvol.10 ―帰国生大学入試についてvol.57―
(2011年12月27日 20:35)