こんにちは。SOLの余語です。
「帰国生大学入試について」では、前回までの記事で、日本の大学の帰国生入試を受験するオーストラリアやニュージーランドの高校に単身留学している人が不利な立場に置かれていることを説明してきました。これは、入試のスケジュールが北半球の国々の教育制度に合わせたものであることや、日本の大学の持つ帰国生に対する認識が変化していることなどによって生じる状況です。
しかし、このような困難な状況を克服するための方策がないかというと、決してそんなことはありません。実際に、僕らがこれまでに指導してきた生徒の多くは最終学年が終了する前に進学先を決めていますし、今年、SOLには4人の生徒が南半球の高校から来ましたが、そのうち3人はそれぞれ早稲田大学法学部や国際教養学部、上智大学文学部史学科に合格しています(残る1人は来年の夏に受験予定です)。今回からは、今年の生徒を例にとりながら、南半球の高校への単身留学生がどのように受験準備を進めるべきかということについて説明したいと思います。
今年、受験をした3人は昨年の12月の始めからSOLに通い始め、1月の終わりまでの約2ヶ月間、教室での授業を受講しました。また、その後は3・4月に2週間、6・7月に3週間ある休暇期間に日本に一時帰国し、個別授業や集団授業を受講する形で小論文試験や英語試験対策の学習を行いました。南半球の高校に通う人からは帰国生入試の直前の長期休暇である6月の終わりから7月中旬にかけての期間に授業を受講できないかという問合せがよくありますが、僕らは今年の生徒のように、最終学年に入る前の12月・1月の休みから、休暇はできる限り全て日本での大学受験準備にあてるのが理想的であると考えています。
このように考える理由の一つには、北半球の国々の教育制度を採用する高校を卒業する人のように受験準備を進めた場合、南半球の高校を卒業する人は十分な学習時間を確保できないということがあります。9月の始めに帰国生入試が始まるまで、高校で出される課題などに注意を向ける必要がなく、2、3ヶ月の間受験準備に集中して取り組むことのできる多くの受験生と異なり、南半球の高校に通う人は、6・7月の長期休暇の後にこのような学習時間を確保できないのが一般的です(9月や10月に1ヶ月程度、高校を休むことが認められるというケースはありますが、それは全ての高校で共通する話ではありませんし、受験直前の時期は、目の前に入試が迫っていることもあり、集中力を保つのが難しいでしょう)。
もちろん、学習期間が短くても合格する人もいるわけですから、一概に全ての人がSOLの生徒のようなスケジュールで準備を進めるべきとは言えないかもしれませんが、帰国生入試においては入試対策の学習を行う機会をできるだけ多く持つことが重要になるということは大多数の受験生に当てはまる話だと思います。例えば、小論文の課題に多く取り組むことは、社会の成り立ちや人間存在のあり方に対する理解が深まるだけでなく、自分のものの考え方の基礎となるような思想を持つ人々に出会う可能性を高めてくれますし、実際に小論文を書いていく中で、自分の主張をよりよく伝えるにはどのような文章構成で書くのが適切か(もしくは、どのような形で文章を書くのが自分に合っているのか)ということに気付く機会を多く持つことにもつながります。また、英語の学習においても、自分が誤って理解していたり、そもそも全く知らなかったりした事柄について確認できる機会が多いことは大きな意味を持つはずです。
このようなことを考えると、上で述べたような学習スケジュールは、集中して学習に取り組める時間を長く確保できるという点で望ましいと言えると思いますが、特に海外での滞在期間の短い単身留学生にとっては利点が他にもあります。次回はそれについて説明する予定です。
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南半球の高校に単身留学している人の大学受験についてvol.9 ―帰国生大学入試についてvol.56―
(2011年12月25日 16:35)