南半球の高校に単身留学している人の大学受験についてvol.7 ―帰国生大学入試についてvol.54―

(2011年12月11日 16:25)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、SOLの生徒が今年の入試会場で目にした理解が難しい光景について述べました。それは、第一志望としている大学に合格しているのに、社会的にはそれより下位にあると考えられている大学の入試を受験し続ける人がいるというものでしたが、これは帰国生入試やAO入試においては、他の受験生に大きな影響を及ぼす行動だと言えます。

現在、帰国生入試などの合格発表はほとんどの大学がインターネット上で行うようになってきていますが、それを見てわかるこのような特別入試の制度的な特徴の一つに、一般入試で見られるような「繰上げ合格」がないということがあります。つまり、合格者の中に他の大学に入学した人がいたとしても、その分の欠員補充は帰国生入試などの受験生から行われることはないということです。このため、前回述べたような受験生が本命でない大学の入試に合格してしまうと、そこで学ぶことを強く希望している人が入学する機会を奪われてしまう可能性が出てきてしまうことになるのです。

また、慶應義塾大学の各学部や早稲田大学の法学部、政治経済学部、商学部、文学部といった学部に帰国生入試で合格した人は、その後の入試で英語試験があるところやTOEFLなどのスコアを提出しているところで有利な立場に立つことができます(ただし、もちろん小論文試験の出来次第で英語運用能力が低い人が逆転することも十分に考えられます)。

例えば、早稲田大学の商学部に合格するには、「帰国大学入試についてvol. 51」でも述べたように、TOEFL iBTのReadingとWritingの2つのセクションの合計がコンスタントに55点を超える程度の英語運用能力が必要になりますが、このような人は全体のスコアが100点を超えているはずです。そうなると、TOEFLなどのスコアによって(TOEFL iBTの場合、68点以上)英語試験を免除され、しかもそのスコアが高ければ高いほど合格可能性が高くなる中央大学商学部の入試では、小論文試験や国語試験で大きなミス(例えば、問題文の読み違えなど)をしない限り、合格を確実なものとして予測することが可能になります。また、学習院大学経済学部の帰国生入試は英語試験のみで、例年TOEFL iBTのスコアが79点以上の人はほとんど合格していることや、青山学院大学国際政治経済学部でも英語試験の出来が重視されていることを考えると、これらの大学にも上で述べたような人は高い確率で合格してしまっても不思議なことではありません。

このようなことを考えると、前回述べたような受験生の行動によって、数多くの大学に合格する人がいる一方で、慶應義塾大学や早稲田大学のような難関大学とされるところ以外に入学を希望している帰国生がそこで学ぶ機会を奪われるということが起こりうるということが言えそうです。そして、その影響は、海外での滞在期間が短く、大学受験までに英語運用能力を伸ばしきれないことの多いオーストラリアやニュージーランドの高校に単身留学した人の受験生活に最も大きな形で現れることになることになるでしょう。

それでは、南半球の国々への単身留学生はここまでの3回で述べてきた傾向にどのように対策すればいいのでしょうか。次回からは、この点について説明していきたいと思います。なお、今回の内容に関して、ご質問などがありましたら、以下のフォームよりご連絡ください。

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